◇御題小説
□おまじない
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ひらひらと舞う白い紙。
ぱらぱらと崩れる破片。
焦げた匂いに混じる甘く柔かい香りは、熱を放ちながらも徐徐に体温を失っていく。
震える細い手が男の腕を掴んだ時、背後の灰色の壁は白い煙を立ち上らせながら、ぱらりと砂塵を落とし。
亀裂が走る。深い亀裂が。
「なんで、高松が…」
「避ける必要がないと、思いましてね」
ぽっかりと開いた穴。
そこから眺める背後の亀裂。
やがて穴にはぽつりぽつりと赤い液が降り。
血の雨に変わっていく。
「…私の腕で手術すれば、問題はない、と…」
後半はぷつりと途切れる。
青年の絶叫が、掻き消したからだ。