◇御題小説

□なみだ
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からりと晴れた夏の終わりに、私は独り丘の上に立つ。
私が纏うのは黒いスーツ。
片手にある花束は、この墓の主が綺麗だと言った私の研究品。水分がなくても枯れない、不死のバイオフラワー。
それは、あの方に捧げる私の思い。

死は決してあらがえないもので、来世など何の足しにもならない。
現在で私が彼を失ったことに変わりはなく、未来で彼が私の前に現われることもない。
この思いは彼の死の瞬間を最大値として、過去の一場面において増大することはあっても、未来に新たな熱をもたらすことはない。それが自然。
私と彼の最期が、ここにはある。

マジック様は意外にも彼の死を悼み、墓前に幾度も謝りながら泣いていた。
立ち去るときに自分の明日からの努力を一方的に口にして、堂々とした足取りで部下と合流する。

お可哀相に。この方は利用されることが大嫌いなのに。

青の一族は家族との強い結合力を美点だとし、時に身勝手な行為を平気でする。
彼はそんな薄汚い連中から解き放たれた、唯一無二の方。

私の愛した方。

花束をそっと横たえて、墓を見つめる。

もう、ここへは来ないかもしれない。
彼のことを忘れたら、行かないつもり。
でも彼は私を咎めはしない。私の中の彼は常に笑っていて、知的な上に無理な要求はしない。

彼の存在を消すことはとても簡単。何しろ私だけが忘れても、消えたことにはなるから。

生きている私は明日を求め続けて、好きなことに没頭できる。
大切な方もまた手に入れられる。
それらは生命の特権。

そうなっても私の心変わりを責めないでくださいね。
あなたにはそのための瞳も唇もないんですから。


…さようなら、グンマ様。
私のこと、忘れないでくださいね…
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