◇御題小説

□雨のち晴れ
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永遠の闇などないように。
明けない夜がないように。
止まぬ雨などないように。
雨の後の快晴を強く心に願ったのは、実際誰であったか。

乱れた金髪をぞんざいに掻き上げ、血で汚れた口元を拭う。いっそ血を糧とする吸血の種族に生まれつけばよかったものを、それほどまでに青年は血に飢えて。
求めるように伸ばした白い腕は、黒髪の青年の視線をぎゅっと掴んで放さない。

「お前は…いいのか、それで?」
「これでいいんだよ、シンちゃん」

シンタローはその腕を取り、深く口付ける。
忠誠を誓う騎士とは異なり、両の眼を虚空へ投げかけながら。

「駄目だよ、そんなんじゃ。もっと、強く…」

言われるがままにしゃぶりつき歯を立てて愛撫を始めると、黒い瞳の輝きが段々と剣呑な色を湛えだした。

「いいんだよ、それで」

彼の動きが乱雑さを極めグンマの瞳に涙が浮かんだ瞬間、白い腕から赤い血が伝い床に零れた。シンタローは歯が食い込んだ箇所を入念に舐め回し、吸い上げる。
彼を見て、グンマは笑う。ボーイソプラノ特有の愛らしさを隠そうともせずに、擽ったさを教えるように。

「痛いよ、シンちゃん」

くすくすと声をあげる。
シンタローはそれを不快に思ってか顔を上げ、携帯していた小型銃をこめかみに押しつけた。
グンマは目を見開き、シンタローを見上げる。

「声を出すな。命令だ」
「…」
「従わないのならそれなりの処分を覚悟をしろ」

聞き慣れた俺様な言葉よりも、総帥らしい形式ばった言い方に、グンマの心臓が高鳴る。
返事もできず頷きもしない彼を横目に、シンタローは血に塗れた愛撫を続ける。

いつからこのような関係となったのか、特に考えたことはなく。二人は今現在にのみ、お互いを認識し合う。

昔と今で変わったことといえば、ただ一つ。
高松が隠居したことだ。
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