◇御題小説

□ピクニック
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滅多に着ない白衣の下はアイロンがけした清潔なシャツと、高松は決めている。その首に折り目ひとつない正絹のネクタイを手際よく結び、大切に保管しているタイピンを手に取る。
そのタイピンに恍惚と頬摺りしてみたりして。

高松がそれの送り主を余程敬愛していたんだということは、傍から見ても明らか。

―グンマ様。
彼は鼻血なんて垂らしながら、いつでも僕の傍に居座り、
―このタイピン似合います?
らしくもない馬鹿みたいに緩んだ笑顔で聞いてきて、
―あなたのルーザー叔父様から戴いたものなんですよ
と惚気る。
仕方なく大げさに褒めて笑顔を向けると、
―ああ!グンマ様。この高松このまま逝っても悔いはありません!
一人で浮かれて血の海を作り出す。

僕は高松に好かれているんだなぁとしみじみ思いながら。
本当は四六時中僕一人を見ていてほしいだなんて我儘は、口にできなかった。
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