◇小説
□喧嘩するほど仲がイイ?
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やってしまった…。
ついカッとなりグンマ様の頬を平手打ちしてしまい、冷静さを取り戻して謝らなければと口を開いたが、時既に遅し。彼は軽蔑の眼差しを残して部屋から出ていってしまった。
本来なら訪問した私が追い出されるはずなのに。
その晩は彼の帰りを待とうとソファで丸まっていたが、結局合えずじまい。
どうしたらいいのかとジャンを睨み付ければ、「お前が悪い」とわかりきったことを言われ、サービスに尋ねれば、「土下座」と明確な答えが返ってきた。ついでと思い双子の兄のほうに聞いてみれば、「金」と先払いを要求された。
代わりに当たり散らして帰ってきたが。
もう、直接に誠心誠意謝り倒さねばならないでしょう!
なんたって、あのか弱くお可愛らしいグンマ様のお顔ですよ。
そこいらの人間がほいほい触って、結果私の実験体アンド憂さ晴らしになっていい代物ではないのだから(ええ、本当に)。
すぐさま私はグンマ様の研究室を尋ねたが入れ違いになってしまい、待つのも忍びないので廊下に飛び出した。
行く先は現総帥の仕事ぶりを偵察しに行かれたキンタロー様のもと。研究員の話ではグンマ様は据わった目で彼らに仕事を任せ(私のせいですね)、気分直しに出掛けたそう。二人の仲がこれほどに親密になったというのは複雑な胸のうちだが、今はドタマ床にすり付けて泣いて謝るほうが先決と考え、総帥室へ歩きだした。
と、曲がり角から聞き慣れた声が届く。
「シンちゃん機嫌悪かったねぇ」
グンマ様!
「寝不足だろう」
キンタロー様!
私はとりあえず角に身を隠して最善策を考える。
「お前も人のこと言えた義理ではないぞ。昨日は一晩中恨み言を呟いていただろう」
「日記を書くときについ口が動くだけ」
「『こうなったらお父様に言い付けてクビにしてもらおう』」
え!?
「しっかり聞いてたんだね。地獄耳っ」
「いくらなんでも言い過ぎと言うか…」
「高松が悪いんだ。僕がいつまでもへこへこ言いなりになるなんて思ってるから。あの傲慢さが信じられないね」