◇小説
□喧嘩するほど仲がイイ?
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あのグンマが傲慢さときたか。
俺は半ば呆れて返す言葉も見つからない。第一、今からでは何を言っても無駄だろう。
「僕はもう大人だし、お休みのキスがないと眠れない子供じゃないのにさ」
「キスだと!お前は高松にそんなこと要求していたのか?」
「してないよぉ!部屋に帰るといるんだよ。なかなか出ていかないからベッドに入ると…」
嫌がり顔を背けるグンマとその髪を撫でそっと顔を近付ける高松の図が、一瞬にして出来上がる。
イヤ、ソレハイケナイ!!
「それはまったくもって過保護だな」
心ここにあらず、もごもごと口を動かしただけの棒読みの言葉に対し、グンマは俺の前に飛び出すと指をつきつけた。
「違うよ、キンちゃん!高松は誰にも構ってもらえなくて淋しいから退屈凌ぎに僕で遊ぶんだ」
そう言ってぷいと顔を背け大股で歩きだす。
やれやれとため息をつきながら、俺も後に続く。
「っわっ!」
角を回ろうとしたとき何かにぶつかり、大して質量のないグンマはその場に尻餅をついた。俺の両手はアイツの早歩きのせいで間に合わず、虚しく宙をかく。
「あぁ、これは…。申し訳ありませんね」
角から現われたのは、今最もグンマに会わせてはいけない男。先程から俺たちの会話を盗み聞きしていたらしく、グンマを見下ろす瞳は冷たい。
彼は睨み付けるグンマを一瞥しただけで、俺たちの横を歩き去る。
「怪我はないか?」
しばらくして俺が呼び掛けてもグンマは全く反応せず、忌々しげに舌打ちをした。