◇小説
□二人の世界
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高松は、カーペットに座って遊ぶ僕に背を向ける形で、机と椅子を使う。持参したノートパソコンで一日中仕事をしているようだ。
僕は殺傷能力のあるものを取り上げられてしまったので、ぬいぐるみと散りばめられたカラーボールと折り紙で遊ぶ。
楽しいわけないじゃん。
それを高松に言うと、
「結果は全てグンマ様に起因しています。いわゆる罰みたいなものですから、文句は受け付けません」
なんて返された。
きっと高松は僕のこと心配してそう言うのだから、おとなしく従った。
それでも、日が経つにつれてこの生活が我慢できなくなった。
体を動かさない分思考が過分に働き、癖になっていた自傷行為を求めてしまう。
これでは高松の折角の協力も無駄にしてしまうと思い、すごく焦った。寂しそうに笑う高松の顔なんて見たくないから。
「ねぇ高松、僕もお仕事手伝おうか?」
何か没頭できることが欲しい。僕は甘える口調で高松に尋ねる。
「結構です」
「なんで?高松いっつも忙しそうでしょ。僕が手伝ったらすぐ終わるよ?」
「必要ありませんから。手伝いは」
「高松ぅ〜」
こちらに向けた背中は壁みたいで、高松の態度は冷たい。
僕はなんだか悲しくなって文句を言い続けた。
高松は嘆息して、ぽつりと言葉を洩らす。
「これは分野が異なりますし、軍事兵器なんですけどねぇ…」
その表情は見えなかったけど、微かに笑っていた気がした。