◇小説
□万華鏡
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「こぉのやろぉおおぉっ!」
彼が跳ね起き、飛んできたのは罵声と拳。
私は避けもせずに、純粋な怒りを受け入れる。
「ぁあ、素敵です…。グンマ様ぁ…」
一発目は顔面に。
二発目は喉元に。
「ぐうっ!?がはっ!」
鼻筋に。
左目に。
胸板に。
唇に。
こめかみに。
「もっと!もっと私にあなたの激昂を下さいっ!」
顎に。
左肩に。
眉間に。
口元に。
上腕に。
いつの間にか彼が私に覆いかぶさる形となり、退路が断たれていた。
金の糸が私の頬に当たり、傷に触れて激痛が走る。
「おまえなんておまえなんてえぇぇぇええぇぇぇえぇっっっつっ!!」
息が、苦しい。
頭痛が。五臓六腑が。
悲鳴を上げる。
ぽたりと、涙が降ってくる。
死刑囚に与える、最期の食事だろうか。
拳が腹に食い込んだのが最後、意、識がぶつりと音をを発し、わたわわ た
しの
ぐ、ん
ま
さま
ぁ
愛しいあなたが欲しいんです。
あなたの体や精神を奪って、継ぎ目すらない宝箱に閉じ込めてしまいたいんです。
そのためなら、あなたを壊すことなんて容易い。
私なら、万華鏡を破壊しますがね。
END