◇小説
□狭間に
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「怪我をしたなら医務室に行きなさい。大切な資料を際限のない君の血で台無しにするつもりかい?」
こちらからでは表情を窺えないが、声から聞くと怒っているらしい。第一、このように資料をばら撒いてしまったのは自分の不手際のせいだ。
高松は困った顔になりながらも主へ丁寧に礼をして、下がる。
散らかった紙を踏みしめながら、扉に手をかける。
「ああ、待ってくれ」
「はい?」
扉を開けたまま立ち止まり、主を見る。その瞳には、希望がきらきらと光を放っている。
「もし私と離れるのが嫌なら、君が散らかしたものを全て元通りに整理してくれないか?私が手を下すにはあまりに陳腐だし、犯人は君たちだからね。当然のことだと思うんだよ」
「はい、確かに」
主の声はとろけるように甘美で突き放すように冷淡で、でも皮肉を込めた笑いだった。
「だから、ずっとここにいてもいいんだよ?」
「!?それは本当に…」
ふわり。
音がした。
高松は驚いて振り返りー。