◇御題小説

□おまじない
2ページ/10ページ

三日前。

「おまじないだよ」

グンマは満面の笑みで小指と小指を繋ぎ合わせ、高松に触れるだけのキスをする。
顔を離して彼がこちらをじっと見つめていることに気付き、はにかんだ笑顔を返した。

「何のおまじないですか?」

そんな様子には構わず高松が不思議そうに尋ねると、グンマは目を伏せぽつりぽつりと語る。

「僕と高松が、ずっと仲良しでいられますように、って」
「それ、キンタロー様にも言ってましたよね?」
「うん」

高松が回想するには、キンタローの小指に優しく絡ませ、少し寂しげな瞳で見上げるグンマの姿。

「その後、シンタローくんともしましたね」
「うん」

無理矢理シンタローと手を繋ぎ、真剣な表情で小指を結ぶグンマ。

ハニーブロンドの健気さとアイスブルーの鋭さを使い分け二人の男を虜にしながらも、更なる糧を求める姿はさながら黒い獣のように貪欲で。高松はそれを嵐の暴走だとふと思った。
後方に残るは屍か、避けて通る人間か。
判断し兼ねるところ。

「知ってます?そういうの三股って言うんですよ」

ため息と共に思考を断ち切りグンマを見やる瞳には、怒りか呆れか軽んじる色が含まれている。
それでもグンマは手慣れたもので、高松の冷たい刺を受け止めつつも、キスをもう一度送る。

二人の口内に広がる蜂蜜の味。
グンマが食した三時のおやつを含む、甘美な行為。

血脈のある親子ではなくとも、一抹の背徳感すらない不純な関係は堕落を誘う刺を隠していて。
それを承知で身を寄せる愚か者。
そう自分自身へ唄い、繋がった唇も小指も引き離す。

お互いに顔を向けることもなく極力余計な動作を排除して、ただ伝えたい言葉だけを口にする。

「高松、僕を裏切らないで」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ