明星
□「雨」
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「・・・ついてねぇな」
そう呟いた声は、目の前でザアザアと降る雨の音に、ただ掻き消された。
―「雨」
そもそもことの原因は、当てもなくしてみた散歩の所為だ。
突然雨が降ってきて、宿屋に戻らなくては、と思ったのはいいが
適当に歩いていた所為で、今街のどの辺りなのかもわからなかった。
がむしゃらに走っていたら、なんとかこの屋根のある場所を見つけた。
とりあえず雨は凌げる。
だが、このまま雨に降り続けられると濡れた服が乾かない。
ベンチの上で寝転んで、風邪を引きそうだな、なんて軽いことを考えた。
―どれくらい時間が経っただろうか。
一向に降り止まない雨は、時間の感覚を狂わせていた。
かなりの時間が過ぎているとしたら、宿にいる皆が心配しだしているかもしれない。
心配をかけるなんて性に合わない。
無謀とわかっても雨の中へ飛び出すべきだろうか、そう考えて身体を起こしたが、思ったより身体が重い。仕方なくまたベンチに身体を預けた。
ついでに頭も痛い。
これは本気で風邪を引いたかな。と笑った。
だが、この状況はあまり楽観視できるものではない。
(誰か、探してるかな・・・)
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