明星

□「雨」
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「・・・・・・ーリ!」

ぼんやりとしだした意識の中、微かな声を聞く。
誰だろう、と辺りを見つめる。

すると、大と小2つの影が見えた。こっちへ駆け足で近づいている。

間もなく影は青い毛並みの犬と、紫の上着を羽織る男の姿となり
それが誰であるのかを確認できるようになった。


(ラピード・・・、レイヴン・・・)

「ユーリ、大丈夫か?!」

駆け寄っていち早くレイヴンはそう言った。
心配した表情でこっちを見るその様は、普段見ることのない動揺っぷりで珍しかった。


「大、丈夫・・・じゃ、ない、かも・・・」

心配させたくないのが本音だが、今はそうできる余裕もない。

「っ」

不安に思ったのか、レイヴンは俺の背に手を回して身体を少し起こさせてから額に手を置いた。
熱がないか確認のために置かれたのだろうその手が冷たくて、気持ちいい。
でもそれはすぐに離された。
レイヴンが苦い顔をしているので、どうやら熱があるらしいということに気づく。


不意にふわり、と身体が浮いた感覚がした。
それを抱き上げられた、と理解するのが遅れたのは熱の所為だろうか。



抱き抱えられた腕の中で、濡れた服越しに感じた温もりがひどく暖かくて、心地好くて、

いつの間にか眠ってしまっていた―






後書き。
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