黄昏れ時に

□黄昏れ時に
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そして入学式――燐と奈美は、雪男がいつにも増して表情が硬く、緊張してきたという言葉を何故呟いていたのか、やっと理解をした。


「――新入生代表奥村雪男」

「はいっ」


「…うわぁ…さすが雪男」


奈美が呟くが、燐は驚き過ぎて何も発せない。そんななか、ヒソヒソと、まわりの声が耳に届いた。それは双子の兄にとっては少々聞き捨てならない言葉だった。


「ちょっとかっこよくない?」

「え?ちょっと地味じゃない?」

「あとで声掛けてみようよ!」


茫然と女子達の会話にかたまっていれば、クスクスと奈美が笑った。


「燐ってば驚き過ぎだって。雪男、多分中学の時もあんな感じだったんじゃない?」

「まじか」

「まじまじ。雪男の夢は確かドクターだよね…すごいなあ」

「…ああ」


燐が微笑んで雪男に拍手を送る中、奈美は燐にだけ聞こえるように耳に手を当てて話しかけた。


「燐もまともに授業参加して、学生してたらモテると思うなあ…カッコイイし」

「ホントか?」

「うん。雪男と同じくらいかっこいいと思うよ?」

「そっそか。ありがとな!」


照れ笑いする燐は奈美の頭をがしがしと撫でた。その後入学式が終わり、燐はちょっと所要があるからと、二人は離れた。…おそらくメフィストとでも合流するんだろう。奈美はそんなことを思いながらきょろきょろとあたりに鍵つきドアがないかと探した。そんなとき、奈美の肩を誰かが叩いた。誰だろう――そう思って当然振り向く訳で、右頬に指がいい感じにささった。



「………」

「なんやそんな睨まんといてーや。かわええ顔が台無しやで?」

「………えーっと三輪くんと勝呂くんだっけ?こんなとこで何してるの?」

「え?俺無視?」

「おおかたおまえと同じや――扉テキトーに探しとる」

「お二人さーん」

「んじゃ一緒に私も言っていいかな?一人はちょっと心細いし」

「もしもーし」

「かまわん」

「ありがと」

「………」

「志摩さん、ちゃんと謝っとき、奈美さんさっきもいったように心細かったんや。遊んだらいきません」

「奈美…すんません。せやから無視したんといてーや」

「…三輪くんに免じて許してあげる」


ちょっとやりすぎたかもと苦笑すれば、廉造は教室の席選びまで側にくっついて離れなかった。…懲りない奴




(廉造くん…いい加減離れてよ)

(俺の隣座ってくれるんならちょっとだけ離れます)


ニッコリ

(…勝呂くん。こいつウザい)

(そうゆう病気なんや。こいつは)

(奈美さんすんませんな)

(皆さんひどっ)



※その後、志摩は勝呂達と一緒に座り、取りあえず奈美はテキトーに一人で座りましたとさ




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