黄昏れ時に
□黄昏れ時に
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――とうとう入学式前日の日となった。正十字学園は完全全寮制だ。奈美は荷物をまとめ、家を出ていく準備を終わらせた。
「…結局父親には一度も会わなかったな」
「まああの人は忙しいからね。そのうち奈美ちゃんに会う事もあるわよ」
「職業がら?」
「そうそう職業がら。お母さんもそろそろ祓魔師復帰しようかな〜。何度も要請五月蠅いし、あの人にも会いたいし!」
ハートをとばす母をみていて奈美はため息を吐きたくなった。何なんだろうこの母。じゃあ行くからと電車に乗ろうとすれば、紀子が忘れ物と、手に何か持たせた。
「携帯?」
「そう入学祝のね。――頑張んなさい」
「うん――行ってきます」
タイミングをはかったかのように電車の扉もしまる。紀子は最後まで手を振ってくれた。
「すいません隣いいですか…あっ」
カラコロ、旅行バック片手に座る席を探していたら、会ったことのある少年にであった。座っていても会った時よりぐぐっと身長が伸びている事が知れてなんか悔しい。おまけにというかなんか以前に増してかっこよくなってるし、連れの二人もなかなかにかっこ可愛い。…奈美のそんな心情など知る由もなく、ピンク頭になった少年――志摩廉造は顔を輝かせた。
「誰やと思えば奈美やないか!」
「廉造くん久しぶりだねー!」
そこから始って、目的の駅まで廉造の隣席にさせてもらった。廉造が昔坊と呼んでいた目つきの悪いのは勝呂竜士君。眼鏡かけたかわいい男の子が三輪子猫丸君というらしい。
話によると三人とも正十字学園に行くとの事。入学して友人ができるかとか不安をもっていた奈美は勿論喜んだ。
(それに…)
「祓魔師目指す子こんなにいるなんて…!学園生活が楽しくなりそう!」
うきうきしていえば、廉造たちが驚いたようにこちらを見てきた。
「お前、祓魔訓練生なんか?!」
「え?うんそうだけど?」
「…いや何でもない。これからよそしゅうな!」
「うんよろしく!」
さっきとは打って変わってニカッと笑った。奈美はその変化に疑問を持ちつつも、同じく笑った。そのあと何故か廉造が渡さないとかなんかいっていたが気にしない事にした。
(坊、これだけは譲れまへん)
(お前なあ…)
(志摩さん…)