黄昏れ時に
□黄昏れ時に
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―――夢をみた
それはまだ、雪男が奈美と一緒に候補生時代、それも初めての任務時の事――
「雪男っ今日の初任務、楽しみだねっ」
「うん…けど緊張するなあ」
「大丈夫だって!だって叔父さまってゆう強すぎる見方がいるんだもの。それに…今回は私達見てるだけだしねー…けど叔父さまが参加するほどのお務めだし、相当ランクも高い。貴重な体験だよ」
「そうだね。僕達も早く大きなお仕事任せられるよう、頑張らないとね」
「うん!…でさ、雪男くん。今回の任務の詳細、教えて?」
「――まったく」
今向かっている所なのに資料くらい目を通しておけと雪男の目が訴えていたが見ていないものはしょうがない。雪男は溜息をつきながらも丁寧に説明した。
「今回は猫又の討伐だよ。もともとその猫又はこの地方の養蚕の守り神として古から蚕を喰う鼠や災害から蚕を護る代わりに祭りや供物などを貰って人と共存していたらしい。けど養蚕が時代とともに廃れていくにつれて人は守り神の事なんか忘れていったしまったんだ…」
「そうそ、んで最近建設会社がその祭られた社壊しちまってお怒りを受けちまったってわけだ。んで俺らは悪魔と化しちまった神殺しに抜擢されちまったわけな」
「神父さん」
「叔父さま」
二人で話していたつもりが、いつの間にやら藤本神父も会話に参加していた。彼はニヤリを笑うと指を指した。
「着いた――此処だぞ」
そこには無残に瓦礫と化した――社に、その上で此方に威嚇する悪魔――猫又がいた。藤本神父は暫く見据えた後、雪男と奈美の頭をわしゃわしゃとやや雑に撫でた。
「いいかお前ら、俺の勇姿をよーくみてんだぞ?」
――そういった後、藤本神父は一人で猫又の元へ行き、血を一滴も流さずあの場を収めてい見せた。しかも使い魔にまでしてみせた。
「雪男、」
「うん」
「叔父さまってすごいね」
「うん…!」
その時の気持ちは今も忘れない。
――奈美はそこで目を覚ました。そして今視ていた夢を思い出す。そういえば…
「そういえば、叔父さまが亡くなってから一度もクロに会いに行ってないなあ…」
クロは何も知らない。知ってしまったら大変な事になるかもしれない。いてもたってもいられなくなり奈美は慌てて着替え始めた。そして旧男子寮へと向かった。
ノックをすれば返事が返ってくる。奈美は扉を勢いよく開けてみた。
「やっほー雪男」
「奈美どうしたの?いきなり」
どうやら燐はいないらしい。奈美が来た事に少し驚きながらも笑顔をみせる雪男に、奈美はそれがねと言いかけた。が、それは叶わなかった。
「あーあちぃー」
「!燐」
「兄さんお帰り」
「おういたのか奈美」
ぱっと笑顔になるも燐はすぐだるそうな顔に戻る。奈美は買い物袋に目を落とした。
「売店でかけてたの?」
「ん?おお!あー!!俺のゴリゴリ君溶け出してるじゃねーか!」
「僕のミネラルウォーターは…?」
「え?あれ!?あっごめん忘れた」
「……」
「俺のゴリゴリ君くうか?」
「いいよ…あとで買ってくる」
「ごめんな」
申し訳なさそうに謝る兄燐に溜息をつく弟雪男。奈美はそんな二人を見てクスリと笑った。
「あっそういえば僕に用事だったんでしょ?どうかしたの?」
「あっすっかり忘れてた!雪男って最近というより――叔父さまが亡くなってからクロに会った?クロは結構強い子で、しかも叔父さま大好きでしょ?大丈夫かなーって…」
「そうか…確かに。僕も会ってないな。むしろ討伐のあの日以降僕は一度も…午後から様子を見に行こうか」
「――うん!あっ念のために正装してくる!」
「いってらっしゃい」
「いってきます!」
手を振ってから奈美は慌てて部屋に戻った。制服に着替え、念には念を込めて悪魔用の武器を普段通りに仕込んでいく。そしてまた旧男子寮に向かい、二人の部屋のドアを開ければ――喧嘩していた。
何故に!?
「……に頼るんだ!もう少し頭を使え!」
「んだと…このメガネ!!」
茫然とする奈美に気づかずか、二人は喧嘩。そして燐の手がいい具合に雪男のメガネにあたると天井にまで飛び、そのまま壊れた眼鏡は雪男の頭上に戻った。
「……ぁ」
「………」
「……ふぁは!?うはは!!奇跡!奇跡おこったあはははは」
「――笑い事じゃねえんだよ…!!」
まさに地を這うような雪男の声に燐は流石にビビったのか大人しくい。奈美はその様子にクスリとほほ笑んだ。雪男の地を見たのは久しぶりだ
キレた後、かかってきた電話対応をしていた雪男は此方をみて困ったように笑った。
「ではすぐ向かいます」
「?」
「奈美、ちょっと早いけどクロに会いに行こうか」
「…うん」
「おっ任務か?」
「兄さんには関係ないよ」
当然のように机の中から大量の眼鏡のスペアの一つをとりだす雪男。当然燐も奈美も眼見してしまった。ありすぎだろうスペア