短編
□〜Happy Valentine〜
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奈美はあちらの世界で高校生だった頃、料理系の部活に入っていた。だからイベント事には必ずと言っていいほど何かしようと企てる。
「――ね?この通り!一緒に作ろうよー」
「作らないわよ」
「出雲のケチっ」
クスクス
「もう出雲ちゃんったら。素直に苦手だから出来ないって言えばいいのに」
「ぱっ朴!」
「え?そうなの??朔子もだめ?」
「私は大丈夫だよ。じゃあ二人で作ろっか」
「うん!出雲、味じゃあないんだよ?気持だよ?ね?つくろー??」
「しょうがないわね!作ればいいんでしょ?!」
ツンデレな出雲に勝ったといわんばかりに奈美は目を輝かせて頷いた。そんな休日の午後の事、三人はチョコ作りを開始した――
〜Happy Valentine〜
そして2月14日放課後、袋に人数分ラッピングしたのもを抱え、出雲と一緒に塾へ行った。
「いい?あんたひとりでつくったんだからね?私は少し手伝っただけなんだから」
「いいじゃん!三人で気持ちを込めて作ったからっていえば」
「いやよ!恥ずかしいじゃない!奈美が個人的に作ったって言えばいいのよ!」
「はいはい。全くぅ恥ずかしがり屋なんだから出雲は」
「なっ」
口をパクパクする出雲をスルー奈美は勢いよくドアを開けた。当然集まる視線。なかでも志摩の表情は輝いていた。
「奈美ー奈美ちゃーん??こっちきてえやぁ〜くれるもんあるやろ?待ち遠しくてならんかったわ」
「まじか。けど廉造くんの分は…」
「…え」
気まずく視線をずらせば焦る志摩。奈美は笑った。
「冗談冗談!出雲と朔子の三人で気持ちこめて作ったんだ〜ありがたく受け取りなさい!あ、ホワイトデーは一人三倍返しね?」
「まかせてーな」
神木さんもありがとなーと志摩がいえば、出雲はふんっと顔を赤らめながら顔を反らした。そんな様子に志摩が内心どころか悶えているのに気づけばさぞかし怒るだろうが幸い気づかない。
その後も男女関係なく配る。するとやや遅れて燐が入ってきた。
「奈美ー教室一緒なら起こせよなー!」
「しょうがないじゃん!部屋にお菓子とりに行ってたんだからさ」
「菓子…ってチョコか?」
「うん。だって今日はバレンタインだからね」
「おおおおお俺にか!?」
「もちろんあるよ。はい」
「あっありがとな!大切に喰うから」
顔を紅くして喜ぶ燐に、奈美はクスリと笑った。
「御礼に燐の手料理を御馳走してね?」
「任せろ!とびきり上手いやつ作るからな!なんなら今日うちくるか?」
「え!?行きたい!!出雲は…」
「行・か・な・い!」
「…ですよねーじゃあ朔子にご飯は燐んとこ行くって伝えといて〜」
「はいはい」
以前も数は少ないが燐の料理を食した事がある奈美。楽しみだと言わんばかりにいつもに増して授業に真面目に取り組めたきがした。