黄昏れ時に
番外編
夢をみた。彼らと共にいたあの頃を。しかし所詮それは夢で…すぐ現実に引き返される。此処は別の次元で…つい溜息を吐いてしまう。決して交わってくれないふたつの世界。。気持ちが沈んでいく。
苦しい 苦しい 帰りたい
不安定な心に気づいたのか、アレンと目があった。
「どうしました?奈美」
「ううん、なんでもないよ」
そういって列車の外をみた。
現在発展中のその国には各地でもくもくと黒い煙が上がる。自分がいた世界とは全く違う景色だがもう見慣れた景色だ。感慨なくそれを眺めていれば、アレンがまた声をかけた。
「本当にどうしたんですか?」
「…そーゆーときはそっとしとくものなの。紳士のくせに」
「時に積極的になることも必要だと思いませんか?貴方はなにか思いつめている」
にっこりいうアレンに溜息をついた。
「…夢をみたの」
「どんな夢ですか?」
「普通の夢だよ。戦いのない世界で大好きな人たちと笑いあってる夢」
馬鹿だよねってなさけなさそうに笑う私にアレンはそんなことありませんよっていってくれた。
「僕も昨夜は素敵夢をみました。教団へ無事帰って、好きなだけご飯食べる夢です」
アレンらしいとおもって笑えば頭を撫でられた。アレンもまた、笑った。
「やっぱり奈美には笑顔が似合います」
ストレートなその言葉がこそばゆくて、けどいつもその言葉に救われる。その世界へ戻る事が出来たらって思うこともよるあるけど、此方にもだんだん居場所が出来てきてしまった。
もしもし此方かあちらか選択できるなら私はその時どちらの世界を選ぶだろう。そう考えてやめた。まだ選択の時ではないから。おそらく伯爵を倒した時、選択しなければならないんだと思う。
だから
「アレン、ありがとう」
「どういたしまして」
いつもこの勇気をくれる貴方に御礼を言ってみた。さっきよりかは心なしか機嫌の良くなった奈美にアレンは良かったと胸を撫で下ろした。
けれどもアレンの本当の想いは届かない