V6

□近くにあるほど見えない
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『俺、彼女できた』




彼が照れながら言ったその一言が私の視界を真っ暗にした。
一番に美香に報告したかったと呟いた彼。それが何でもない事だったら喜べたのに、私の感情の機能を一切止めた。


うそ、どうして、いつ

わたしの身体が一瞬で冷えてドクドクと心臓が身体を揺らす。頭の中で巡り始める言葉に彼がたどたどしく応えてくれた。
告白された、隣のクラスの子、ふわふわした感じの可愛い子、スレンダーでタイプの子だったらしい。
それは友達がある日、隣のクラスに清純派の新人女優みたいな凄く可愛い子が居ると教えてくれた子だった。実際に見たら本当に可愛くて、同じ人間なのに庶民派な私とは全く作りが違った。そんな子と付き合うのはどんな人かと思ってた。それがまさか目の前の人だなんて思いもしなかった。准一はかっこいいけど、まだ女の子とか付き合うとか興味がないと思ってた。けど、それは私のただの思い違い。
真っ赤になって俯きながら好きと言ってくれた瞬間、守りたい、可愛い、好きって感じたらしい。

初めてできた彼女に浮かれて、夢中で話す彼の言葉は段々と聞けなくなって今思い返しても覚えていない。彼は喋りすぎて恥ずかしくなったのか、何か言えやとボソッと呟いた。

おめでとう

私は准一に初めて感情の無い言葉を向けた。反対にそんな私に気づかない彼は、笑顔でありがとうと嬉しそうに笑った。
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