短篇

今のは反則だ
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高校に入ってから三年間ずーっと同じクラスの女がいる。顔はそこそこに可愛いかったりするんだがとにかく性格が悪い。分かりやすく言うとジャ〇アンみたいなやつ。クラス内のガキ大将みたいな。まあ別に弱い者イジメするとかそんな事はしねーがある程度クラス内でよく目立っている奴には容赦ない。デケー声でそいつの軽く気にしてる事言うわ下ネタ言ってくるわ消しゴムのカス投げてくるわ。…つーか9割方されてるの俺なんだけどね。入学当初から地毛の銀髪が目立つ俺は目を付けられていたらしく、初っ端からあだ名がもじゃ田″もしくは天パ″だった。まともに名前を呼ばれたことは一度もない。まあ上はともかく、俺の下の名前なんて知りもしねーんだろうけど。

今日もいつものように散々ちょっかいをかけられて一日が終わった。性格があんなんじゃなけりゃーなーなんて、放課後誰も居ない教室でうっかり6限目から今に至るまで寝過ごして居た俺は動くのも面倒で机に突っ伏したままボーッとアイツの事を考えていた。つーか誰か起こせよな。

不意に廊下から誰かの足音が聞こえてきた。その足音はどんどんこっちに近付いて、俺の居る教室の扉を開けた。


「…あ、れ?坂田…?」


教室に入って来た人物は俺に気付いたのか間の抜けたような、びっくりしたような声でそう言った。何故か咄嗟に寝たふりをしてしまった俺にはその人物を見ることは出来ないが、声からするに女みたいだ。


「坂…、もじゃ田ァ?アンタこんな時間まで教室でシコシコシコシコなにやってるわけー?」


ケラケラと笑いながらその女は再度声を発した。いやいやお前こそ何しに来たんだよつーか下ネタ止めろ、と思わず口走りそうになったが関わると面倒になりそうだと思い俺は尚も寝たふりを続けた。


「、ねえホントに寝てんの?」

雰囲気は一転。俺が本当に寝てると思ったらしいヤツの声音は何故か徐々に弱々しくなり始めた。


「…いっつもごめんね、ちょっかいばっか掛けて。」


心臓を何かに鷲掴みされた気がした。なんなんだ突然。今目の前に居るであろうコイツは誰だ?毎日毎日バカ見てーにギャンギャン吠えるコイツは何処にも居なくて俺の前に立っている女は見なくても分かるほどにしおらしくなっていた。


「初めてアンタを見かけた時なんて綺麗な銀髪なんだろうって思った。仲良くなりたいなーって思った。でもいざとなったら素直になれなくて…ホントは普通にアンタと、坂田銀時と話したかっただけなの…。」


最後の方は声が小さすぎて良く聞き取れなかったが確かに坂田銀時″と、そう言ったのは分かった。なんだよ俺の名前知ってたんじゃねーか。どくんどくん。何だよウルセーな俺の心臓。どーしたんだよちょっと黙れよ。コイツに聞こえちまったらどーすんだ。


「それに…私アンタが、坂田が好きなの。」











今のは則だ


あ、今のダメだわ。完全に打ち抜かれたわ俺。

坂田″と呼ばれただけでこんなに嬉しいとは思わなかった。
(今度は、下の名前を呼ばせてみてェ)



ガキ大将の本当の姿はただの恋する女の子でした。



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企画call me!様 提出
ありがとうございました!



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