追憶の中に消え行く……
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第一話 「静かに、ひっそりと」
しっとりと雨が降る日の午後、暗幕で締め切った暗い視聴覚室から女子生徒の声が聞こえてきた。
「───でね、女の人はおまわりさんを連れて公衆トイレに戻ったんだって……」
彼女達の中の一人、麻衣が如何にも怪談にピッタリの声色で話している側には、他に3人の女子がそれぞれペンライトを持って怖々話を聞いている。
麻衣は話し終えると、持っていたペンライトの明かりを消した。
彼女達がやっているのは所謂怪談と言うものだ。話し終える度明かりを消していって、最後に数えると一人増え、その一人は霊だと言われている。
麻衣が話し終わった事によって、残るは一人のみだ。
「……じゃあ旧校舎の話をするね」
そう言って彼女が話し出した。麻衣達の学校にある崩れかけの旧校舎。
あそこは祟られているのだ。
新校舎を建てた際に、西側の壁を壊した時、屋根が二階ごと落ちて、一階の作業員全員が死亡し工事は中止。
去年の体育館建て直しで工事が再開されたものの、以前と同様に人が死んでいる。工事のトラックが暴走し、授業中のグランドに突っ込んで、生徒が死亡。頻繁に起こる火事や事故、自殺した先生、子供の死体……
「それと先輩が夜ね、旧校舎側の道を通ったら……」
こっちを見つめる人影がいた。彼女はそう言って話を締めくくった。
最後の一人のペンライトが消え、辺りは暗闇に染まった。
いよいよ、ここからが本番だ。
麻衣達は緊張した面持ちで、数を数え始める。
「いち」
「にぃ」
「さん」
「し………」
「ご」
「キャーーーッ!」
「やだーーっ!」
「出たーっ!出たーーっっ!!」
4人だけしか居ない筈なのに、居るはずの無い5人目の声がした事で、悲鳴を上げ飛び上がると、不意に部屋の電気が点いた。
多分彼が電気を点けたのだろう、入り口に見知らぬ男子が立っていた。
「い、今『ご』って言ったのあなたですか……?」
「そう……悪かった?」
そう悪びれも無く答える彼はかなり整った容貌で、間違い無く美形の中でも上位の分類に入る。麻衣以外の3人は、コロッと態度を変え、かなりはしゃいでいる様子だ。
その身替わりの速さには、麻衣も呆れる程だ。
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