追憶の中に消え行く……
□第一章 0
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−序章−
都心は眠らない。
夜の帳が下り、昼とは違った顔を見せる街。煌々と輝く光の数々が夜景を彩り、絶える事の無い音が街をごく身近に感じさせる。
聳え立つビルの内の一つ、外の喧騒と切り離されたホテルの一室で、電話の音が鳴り響いた―――─
ピロロロロ……ピロロロロ……ガチャ
いつの間にか現れた人影が無言で受話器を取る。
「依頼だ」
挨拶も前置きもなく、受話器から放たれた声は、機会を通してくぐもった男のものだった。
受話器を取った人影は、男の無作法に気にした素振りは見せず、一拍置いて淡々と受け答える。
「……内容は?」
スタンドライトのみの暗い部屋の中、僅かに受話器から漏れる相手の声と、紙にペン先が擦れる音、そして吐き出されたため息だけがやけに大きく響く。
「分かった、いつも通りでよろしく頼む」
二言三言話した後、通話を切った。
部屋には再び静寂が訪れる。
人影はデスクの上にあるノートパソコンを起動させ、送られて来たメールに立ったまま目を通す。
僅かな明かりしか無い暗い部屋の中で、ディスプレイの青白い光がやけに明るく、空虚な部屋の中をより一層空々漠々とさせるかの様だ。
その人影は闇と光のコントラストの中で暗く陰って見えず、僅かばかり、キーボードに伸ばした手が照らされているだけだ。
キーの上で軽やかに踊ってした長い指が、ふとその動きを止めた。何かに気を引かれた様に少し身を乗り出した影の顔が、下半分だけ照らされる。
自嘲の笑みを浮かべ、意味あり気に呟いた。
「学校の旧校舎、ね………」
第一章 悪霊がいっぱい!?
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