サラバ俺の日常よ!(長編)
□ちょっと待て、落ち着こう
1ページ/6ページ
柳瀬 梁 22歳、
名を上げられるほど頭が良かったり、特別才能に秀でている訳でもない至って普通の、何処にでもいる大学生。
誰が何と言おうと一般人だ。反論は認めない。
「の、筈なんだが……、一体どうしてこうなった……」
いや、むしろ俺がどうなったんだ? 第一、此所はドコデスカ?
冒頭から突然の独白に続き、大変恐縮ではあるが、今一言だけ言わせてもらいたい。
迷った。
大人になって情けない、と罵りを受けるかもしれないが、今だけは黙って甘受しよう。ああそうだとも。俺は大学生にもなって迷子だよ。
つまり、俺は見知らぬ場所で途方に暮れていた。
それは、今から遡る事約2時間ほど前。
俺は何時ものように大学の講義を早々に終えて帰宅し、俺の愛しの史郎と戯れた後、ふと史郎の食料が切れかかっていると言う重要事項に気付いた。己れの失態に一通り悪態をついた後、これでは不味いと急ぎ買い出しに出掛けた。(誤解の無いように言っておくが、史郎は家で飼っている犬の名前だ)
「う〜、寒みぃな、もうそろそろ冬か」
近所にあるスーパーはちょっとしたホームセンターも兼ねていて、大体の物は揃う。何だかんだ便利なので大変よろしい。
夕飯前で賑わっている店内に入ると、食欲の秋と言うだけあって、色とりどりの食べ物が "今が旬!" とばかりに並べられている。
んでもって、目の前で主婦達によって繰り広げられるタイムセールスのと言う名の戦い。
………壮絶だなぁ(遠い目)
店内の暖かさにホッと息を吐くと、食品売り場を避けて目的の物を探しにかかる。
レジでの清算待ちに苛立ちつつ、やっとのことで商品を購入し、一人家路についた。
日は暮れかかっていて、オレンジ色の夕日が俺の影を黒く長く伸ばしている。
「ああ、平和だ。こう言う時間が好きなんだよな」
沈み行く夕日を眺めながら日常の幸せを噛み締める。(そこ!爺臭いとか言うな)
思わす目的を忘れ、夕日に見入っていると、ふと視界の端に何か黒いモノを捉えた。
_