サラバ俺の日常よ!(長編)

□Chiaroscuro(キアロスクーロ)
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……………


……………………………


何なんだ、この重苦しい空気は………



部屋には俺と、他に三人が神妙な面持ちで沈黙を守っている。


並盛の町を案内された翌日、朝食が終わった後急に呼び出され今に至るのだが、これ迄誰一人口を開いていない。




三人の内二人は俺のよく知る人物だ。


俺の斜め前に座る和服姿の麗しい男性、嵯峨 京史郎さんは俺に住む場所と食事を与えてくれ、ほんの一日前に俺の師匠になった人だ。


そして彼の向かい側、俺の隣に座って居るこれまた誰もが羨む美貌の黒髪美人、大和撫子と言う言葉がピッタリの女性は嵯峨 薊さん。
京史郎さんの奥さんで、俺の事を自分の事の様に心配してくれるとても優しい人だ。




では、俺の前に座って居るこの人は一体誰なのだろうか?




上は黒をベースにしたストライプのカッターシャツに赤いネクタイ、下は黒のスラックス。髪は茶のカジュアルウルフで二人に負けず劣らずの容姿をしている。

最も目の前の彼の場合、ホストに近い雰囲気なのだが。



そんな彼もこの場の雰囲気が居心地悪く感じたのか、ちらちらと京史郎さんの方を見ている。どうやら彼が切り出すのを待っている様だ。





しかし京史郎さんはひたすら無視の姿勢。絶対気付いてるだろ………




不意に、目の前の男が俺の方を見た。
そのせいで彼と目が合ってしまった。



そりゃもうバッチリと。



ぶつかった日本の一般的色合い───茶色い瞳には、純粋な興味の色が見て取れた。


相手が愛想笑いをしたので、思わず愛想笑いで返した。もうこれは条件反射だ。


俺がぶつかった視線を外さずじっと観察していたからだろうか、彼がフイと視線を反らせた。

余りにも不躾だっただろうか?
ちょっと罪悪感が……






しかし、いくら待っても一向に話し出す気配がない。


余りに物々しい雰囲気なので、僅かな動きでもはばかられ、出されたお茶さえまともに手が付けられない。


俺とは逆に、目の前の彼は落ち着きなく動いていて、しょっちゅうお茶を飲んだり、急須に手を掛けたりと、忙しない。


どっかの親じゃないが、もう少し落ち着きを持ったらどうだと言いたくなってしまう。



しかも、その間二人はずっと押し黙ったまま。


カ……カオスだ…

ラオスでもビオスでもなく、カオスだ……!

窒息死しそうな物々しさなんですが。






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