追憶の中に消え行く……


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 黒ずくめで『渋谷』と名乗る彼は、転校生か? と言う問いには「そんなものかな」、何年生か? と言う問いには 「今年で17」、とどうも上手い具合に質問をあやふやにしている気がする。
 麻衣はその様子に引っ掛かりを覚えた。




「あたしたち怪談してたんです」


「ふぅん……仲間に入れてもらえるかな」


「渋谷先輩も怪談好きなんですか?」



 その問いにニコリと笑ってYESと答えた時、麻衣は違和感の正体に気付いた。



 (やっぱり…! 目が笑ってない! その気もないのにニコニコしてるってことは、こいつ絶っっっ対にウラがあるに決まってる !!)




「こんなトコでなにしてるんですか」


「ちょっと用事があって」


「じゃあそれをすれば。あたしたちは帰りますから」



 麻衣は半ば強引にその場を終わらせた。勿論他の3人は不満ダラダラで、ここで終わらせるものかと怪談の約束まで取り付けていた。


 麻衣は、最後に後ろをチラリと振り返り、後ろを向いて何か考え事をしている渋谷に警戒の目を向けて、教室から3人をせき立てるにして出て行った。



 麻衣達が出て行き少し経って、渋谷は教室を出た。


 ふと、人の気配を感じ、顔を上げる。

 すると少し離れた位置を、ウィンドブレイカー姿の男子が歩いて行く所だった。



 時間が時間であるから、部活中の生徒だろう、そう判断を下してはやくも意識の外に追いやった。

 視界の端で、男子生徒はダンボールを両手で抱え、急ぎ足で角を曲がって姿が見えなくなった。






 何でも無い放課後の光景。

 一見、何の変哲も無いように見えるこの学校は、自分の期待する望み通りの結果をもたらすだろうか。


 渋谷は旧校舎の方をチラリと見て、踵を返して歩いていった。



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