こどもべや文

□注射
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「予防注射、ね…」

明日は保育所で予防注射があるらしい。
隼人から貰ったプリントを手に呟くと、不意に反対の袖を引かれて。


「…ひばり、注射って痛いんだろ?」
「え?」
「今日聞いたんだ!そしたらみんな痛くてこわいって…!」


泣きそうになりながら必死に言う隼人が可愛らしい。
しゃがみこんで頭を撫で、安心させるため説得しようとしたのに、


「では代わりに僕の注射はいかがですk」
「いい加減にしないと本気で殺すよ」


今日は仕事が遅くなったから、代わりに骸に迎えに行ってもらって。
帰り際に骸の部屋に隼人を引き取りに来た。
だから骸に感謝はしている、してはいる、けど。
いい加減隼人に妙なことを吹き込むのはやめさせないと。
何にでも好奇心旺盛な年頃だから、ほら、今もまた。


「骸、お医者さんなのか?」
「…えぇ、ある意味お医者さんですよ。ただ隼人君にしか注射できませんが…」
「俺だけ?」
「正しくは隼人君の体の熱を沈めるためにしか」
「…余程死にたいみたいだね?」


ぎろりと睨めば、怖いですねなんて笑いながら骸は口をつぐむ。
何故かきらきらした瞳で骸を見つめる隼人を、僕は見つめて。


「隼人、注射は確かに痛いかもしれないけど、注射したらもっと辛い病気にかからなくて済むんだよ」
「病気?」
「熱出て苦しいの、嫌でしょ?」
「……うん」
「大丈夫、痛いのは一瞬だけだから」


隼人は分かったのか少し俯いて。
もごもごと何かを呟く。


「…じゃあ、がんばったらごほうびくれる?」
「ご褒美?」
「……ぎゅーって、して」


あまりにも可愛らしいその言葉に、一瞬脳がフリーズしてしまって。
一拍遅れて、此方を窺うように見るその体を抱き締める。


「これで大丈夫?」
「…ん、がんばる」


自分から言い出したのに照れたように顔を伏せてしまうこの子が、心の底から愛しいと思った。


*END*


骸まじ黙れ←
学校で注射したよ記念
というか保育所に予防注射ってありましたっけ?←←
…無い気がする

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