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□moon
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ザザ…と風がホグワーツの湖面をなぜる音がする。


体を起こし辺りを見回せば、暴れ柳はまるで静止画のようにぴくりとも動いていなかった。
コブがある幹の下には先ほど飛ばした枝が転がっていた。
「ま、間に合った…怪我はない?セブル…」
目線を下に向けると、とても近くにセブルスの顔があった。
睫毛の一本一本が数えられそうだ。
まるで、ジェームズが押し倒したよう。
「おまえ、怪我は…?」
ジェームズの体がびくりと跳ねる。
スネイプが背中に腕を回し、いきなり撫でてきたからだ。
「良かった…怪我してない」
怪我の有無を確かめ終わっても、手を下ろそうとはしなかった。どうやら、疲れ切って腕を動かすのも億劫らしい。
「どうして、無茶をするんだ」
「いや、だって…最初から助けに来たわけだし」
「し、死んじゃうかと思った…」
「誰が?」
「お前が」
「心配してくれたんだ」
「そういう訳じゃ…もういいだろう、降りてくれポッター」
スネイプは必死に組み敷かれた下から逃げようとするがジェームズは言葉の続きが気になるあまり、スネイプの顔を覗き込んだ。
「退かないよ」
ジェームズの長い指がスネイプの頬を撫でる。
「しつこいぞ!」
顔を真っ赤にするスネイプのきっと睨むような視線と、ジェームズのにやけた視線がぶつかった。


がぶり


何が起こったかジェームズはわからないまま、ちゅう…とスネイプの唇が離れる。

「盛るのは狼だけで十分だ!馬鹿者!」
そう言い放つと、呆然と固まるジェームズの下から這い出た。
そばにあったローブを見つけると奪い取るようにそれを拾い、灯りもまばらな城へと走っていた。

「こ、腰が抜けた…」
唇に残された熱が全身に回り、心臓を波打たせた。
「なに、あいつ、盛ってんのは…あっちじゃん…」
はあ、と熱いため息をひとつ、重い腰を上げ透明マントを被り寝室へと向かった。


「月には、獣の血を騒がせる効果がある。
これは、人狼だけでなく、人間にも間違いなく影響する。」

後日、ジェームズは人狼に関するレポートに自信を持ってこう記したという。


<終>
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