現パロ部屋

□ルームシェア
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入学式のあの日、赤毛の、少しよれたスーツの後ろ姿を見かけた。

まさか、と思った。
でも何故だか見た瞬間、むしょうに懐かしい気持ちに駆られ、人違いだという可能性を無視して声をかけてしまった。

それがこの奇妙な生活のスタートだった。


「あ、ルシウスおかえりー」

「…ただいま」

ドアを閉めながら、不本意ながらも返事をしてやる。
何やらキッチンからいい匂いが漂っている。

ひょろ長い身体にエプロンを引っ掛け、パタパタとスリッパを鳴らしながら歩いてきたその人物が、アーサー・ウィーズリーだった。

「今日はほうれん草とベーコンのキッシュだよ、まだ時間あるから先に着替えてきて」

「わかった」

まさか、まさか自分が誰かと生活を共にするとは思っていなかった…しかも男と。

アーサーとは小学校が一緒だった。
接点といえば、6年生の時たまたま委員会が一緒だったくらいだ。
中学は別だった。私は私立、アーサーは公立、よくある分かれ目だった。
本来ならそれで終わる間柄のはずだったのだが、二人は同じ大学を選んでいた。

そしてなんだかんだ懐かしい話をする内に、何故だか私のマンションをルームシェアすることになってしまった(正確に言うと無償で住まわしてやっている)

着替えを済ましテーブルの方を見ると、アーサーがてきぱきと皿を並べ、グラスに水を注いでいる。

私が来たのを見てアーサーは顔中で笑った。

それを見て嬉しいと思う私も随分と感化されてしまった。
あの日の私の行動が、確実に私の人生を変えてしまった。
その行動が正しかったどうかは全くわからない。
ただ今はそんなことはどうでもよく、アーサーの作ったキッシュを早く食べたいという気持ちしかなかった。

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