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□sleeping beauty
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そこは、鬱陶しいほどの闇。

キャンパスを黒く塗りつぶしたような闇の中にスネイプはうずくまっていた。
自分の姿も、周りの景色さえ窺い見ることもかなわない漆黒。
暗闇はどこまでも広く、息の詰まるような閉塞感はなく、むしろ無限の広さを思わせた。

その空間の広さがスネイプを孤独感で蝕んでいく。
ちくちくと、針で刺されるように静かな恐怖が身体を囲んでいった。
じっとしているのがいよいよ辛くなり、くるりと後ろを振り返ると、遠くにオリオンのように輝く一点の光が見つけた。
見入るうちに、遠くに見えたはずの光が近づいていることに気づく。
金色かと思えば赤いような、橙のような、見る見るうちに色様々に変化する光は、まるで何かに遠隔操作されているようにこちらに向かっていた。
その姿は生き物のようで、同時に無機物のようで、見ている者を惑わした。

膝を抱えて座っていたスネイプはふいに立ち上がる。
光と同じようにふらふらと夢遊病のような足取りで光に近づきはじめる。
光は、弱い重力を核においておぼろげな球体をつくっているようだった。
近づけば近づくほどに、それは頼りなさそうだった。輪郭さえ覚束ない。

…あんなに輝いてると思っていたのに…

スネイプの鼻先で光は停まった。

「セブルス」

光から声がしたような気がした。
誰の声なのか、懐かしいような、はたまた聞き慣れたような。
スネイプはその光の眩しさに目を細め、ゆっくりと手を持ち上げ、触れた。
次の瞬間、スネイプは光の中にいた。
上を見ても下を見ても、360度光に包まれていた。
暖かく、心地良く、いつまでもそこにいたかった。
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