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□moon
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月が高く上りその光が煌々と、飾り枠で縁取られた窓から差し込んでいる。
それを受けた羊皮紙の束が淡く発光しているように見える。

暖色系の調度品で飾られた部屋には、天蓋付きのベッドが四つ置かれている。
見ているだけでも暖かそうな色合いの寝室は、まさしくグリフィンドール寮。
どこの寮よりも居心地がいいだろう、と全グリフィンドール生が自負するほどだ。

その一部屋にジェームズ、シリウス、ピーターが就寝までの時間をのんびりと過ごしていた。
「なあ、今日って満月だよな」
シリウスが意味ありげな笑みを浮かべながらジェームズに問いかける。
トランクを引っ掻き回し、替えの靴下を探していたジェームズはぴたりと手を止める。
「うん。ここ最近ムーニー顔色悪かったし…もう屋敷に着いた頃なんじゃないか」
屋敷という言葉にピーターがぴくりと反応し、またもや意味ありげに視線を合わせた。
ただ、気になるのは二人の表情が対照的なことだった。
シリウスは新しいおもちゃを与えられた子供のようにはしゃぎ、ピーターはどこか怯えている。
「いや、あのな!聞いてくれよ。昼ごろ大広間で泣きみそに会ったんだけど、なんかまた突っかかってきたから腹立ってさ…」
シリウスは言葉を切り、窓から月をちらりと見上げた。
薄青の双眸に月が映る。
「今夜、暴れ柳のコブをつつけばトンネルに入れるんだって言ってやったんだ。きっとあいつひ弱だから暴れ柳に一発やられてんじゃないか?」
シリウスに背を向けていたジェームズは、力一杯トランクを閉め、そばにあった透明マントを引っ付かんでドアに向かって駆け出していた。
「いっそあいつが聖マンゴに送られ…ってどこ行くんだよ!?」
勢いよくドアを閉まれば、シリウスの冗談も、それに対するピーターの笑う声も一切聞こえなくなった。
まだ人の多い談話室を、人が振り返るのも気にせずにジェームズは「太った淑女」の肖像画をばして
開け、廊下を全力で駆けた。
後ろから「太った淑女」が何か叫んでいるが、ものともせず透明マントを被り、夜の校庭へと一目散に走った。
急に走ったため横腹がきりきりと痛み、夜の冷気に肺が悲鳴を上げたが構ってはいられない。

視界の端で景色が流れる。


あっという間に暴れ柳の植わっている場所に着いた。
『動きが止まってる…』
ジェームズは愕然としながらトンネルへ走った。
『暴れ柳の動きが止まってる、来てしまったんだ、セブルスが』
親友の浅はかさにジェームズはただ驚くだけだった。

スネイプなら実際に行動するだろうとわかっていただろうに。
もしリーマスがスネイプを傷付けてしまったら退校処分はもちろん、心に傷を与えるだろう。
リーマスは己の存在を呪うことになる。
そんな思いはさせたくない。
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