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「アーサー」

聞き慣れた声がする。

「…ルシウス?」

呼び止められた僕はくるりと振り返る。

「さっきの女、誰だ?」

薄青の瞳に透けるようなプラチナブロンド。
この赤毛を炎のようだと称するなら、彼の髪は透き通る絹糸のようだ。

「女?」

僕は微かに微笑を込めて聞き返す。
その表情がルシウスの逆鱗に触れるのは百も承知だ。
「赤毛の…さっきまで腕組んでた」
射抜くような視線。
涼しげに見える双眸に静かな炎が燃え始める。

ルシウスは怒っていた方が綺麗だ。

「ああ、見てたの?」

僕は手で赤毛を撫でつけながら困ったような笑いを含ませ答えた。
ルシウスの頬にほんの一瞬朱が差した。

「モリー…というのだろう」
ルシウスが一歩詰め寄った。
「よくご存知で」
「…最低だ、お前は」
ルシウスがさらに一歩詰め寄る。
「嫉妬してるの?」
薄青の瞳がかっと見開き、眉間に皺が寄る。
ルシウスは最後の一歩を踏み込んだ。
切なげに眉根を寄せた顔を至近距離で見る僕の動悸は次第に早くなる。
陶器のように白く美しい手が頬に添えられた。

「嫉妬、なんかする訳ないだろう」

手が、震えてるよ。ルシウス…

そう言おうと口を開きかけたが、ルシウスの唇で塞がれた。


葉巻のような甘くほろ苦い香りがする。

以前はしなかった君の香り。

闇の香り?

君がどこに行こうとしているのか、僕は知っている。

もう元には戻れないことも。
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