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□unicorn
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「ユニコーンのたてがみ」

図書館で暇つぶしに本を読んでいたルシウスは、聞き慣れた声に振り向いた。

「なんだ、やっぱりアーサーか」

名前を呼ばれた赤毛の青年は微笑みながら隣の席に腰を下ろした。
じろりと睨みつけるルシウスを気にもせず、その手は金糸の髪に伸びる。

「君ってほんとにユニコーンみたいだ」

ああ、さっき言っていたたてがみというのは髪のことだったのか。
なるほど、と納得しながらルシウスは髪を撫でる手をぴしゃりと叩いた。

「そういうところもユニコーンみたいなんだよなあ」

手を振り払われたにもかかわらず、アーサーはにやにやとだらしなく微笑んだ。

「そういうところ?」

ルシウスが尋ねると、アーサーはしつこくまた髪に手を伸ばす。

「簡単には人に慣れなくて、つんけんしてるとこ。君は高貴な生き物だからね」

「なら生き血でもすすってみるか?」

予期していなかった応答にアーサーは目を瞬ききょとんとした。

「ほら、どうする?永遠の命が手に入るチャンスだ」

ルシウスは挑発的に微笑みネクタイを優雅に取り去った。
躊躇もせず白い指でシャツのボタンを外していく。

「ま、待って待って!」

図書館でルシウスが脱ぎ始めたこの状況は誰が見てもおかしい。
アーサーは第三ボタンに触れそうになった手をがしっと掴み自分の方に引き寄せた。

「確かに不死身にはなれるけど、君を傷つけてまでなりたくないよ!」

静まり返る図書館にこだまするアーサーの叫び。

(自分が挑発して仕掛けたはずだったのに)

直球すぎる言葉にルシウスは顔が熱くなるのを感じた。

「…その手を離せっ」

(きっと顔が真っ赤になってるはず)

「生き血はいらないからキスが欲しいな。顔見たらしたくなってきた」

ルシウスの言葉もむなしく、アーサーは頬を紅潮させ早くも臨戦態勢だ。
ルシウスは小さく舌打ちをし、勢い良く椅子から立ち上がった。
その反動で絡んだ指が解かれる。

「こんなところで…キスがしたい、だと!?私まで変人扱いされる」

つん、と言い放つと読んでいた本もそのままにしてアーサーに背を向け歩き出した。

「え…置いてかないでよ。ルシウスー」

可愛い可愛い僕のユニコーン、とアーサーは心の中で呟いた(口に出したら今度は平手が飛ぶ)

アーサーは歩く度に揺れるユニコーンの尾、もといプラチナブロンドを追いかける。

その光景は、ユニコーンに魅せられた狩人にも見えた。
ただ違うのは、狩人はもうとっくにユニコーンを仕留めているということだった。


FIN

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