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□baciare
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暖かい日差しが差し込む室内、そよ風に揺れるカーテン。そんな清々しい朝、獄寺は美しい音を響かせる小鳥達のさえずりで目を覚ました。


目覚めて最初に思考が巡ったのは、清々しい朝の様子でも、小鳥達のさえずりでもなく、身体が妙に重いという違和感だった。


身体をベッドから起こそうとしてみるが、腕を支えに上体を起こした途端に、目の前の世界が反転した。


そのままボフンと音を立ててベッドに倒れた獄寺は、ある仮定に辿り着いた。


『……………(風邪…か?)』


いや、そんなことはないとすぐに考えを変えた。ただ疲れているだけだ。そう考えることにした。


そしてそのまま、気だるい身体をどうにか起こし学校へ行くための準備を始めた。


ピンポーン……ピンポーンピンポーン


準備が整った頃、タイミングを見計らったかのように獄寺の家のチャイムが鳴った。


こんな変なチャイムの鳴らし方、普通では到底有り得ないことだ。できる範囲で想像したって、不審者以外に検討がつかない。


だが、獄寺にとってこのチャイムはもはや当たり前で、日常的なものとなっていた。


気力を振り絞って立ち上がり、玄関に行く。そこを開ければ……


『いよ!おはよう獄寺!!迎えに来たぜ!』


爽やかスマイル満載の山本がいつものように立っていた。
山本は獄寺と付き合い始めてからというもの、毎日こうやって獄寺を迎えに来る。そして二人でツナを迎えに行くのだ。


『いいかげんチャイムの連打はやめろよな。近所迷惑もいいところだぜ?』


『わりぃ!』


獄寺の注意を軽く受け止め謝る。これもいつもと一緒。ただ、いつもと違うところは獄寺の体調。
異変に気づいた山本は先に歩を進めた獄寺の手首を掴んだ。


『獄寺?顔色悪ぃけど、どうかしたか?体調悪ぃなら今日は休んだ方がいいんじゃねぇの?』


そう言って、空いた方の手で獄寺の額を触ろうとした時、ふいに獄寺が首を捻り回避した。


『そんなんじゃねぇよ、ただの寝不足だ。』


握られた手首を振り払いながら、山本に伝えた。
山本は『そうか?ならいいけど。』とすぐに掴んでいた手を離した。


素直に手を離した山本ではあるが、やはり可愛い恋人の異変は誰から見ても明らかなので、
(こいつが無理したらすぐにつれて帰ろう。)
と心に決め、ツナの家に行った。


ツナを連れて歩いているとある異変に気づいた。
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