テニスの王子様
□one more
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「真っ黒幸村出ておいで
でないと目玉を『ほじくってほしいの?』
うわ真っ黒出た恐いごめんなさい!!」
「フフ…俺は真っ黒なんかじゃないよ真っ白だよ…ね?名無し」
「…そ……そッスね(こっえええ―…)」
この真っ黒な彼は同じクラスの幸村精市。
見た目は男にはとても見えない美人さんだ。しかしテニス部なので脱いだらすごいらしい(笑)
彼は、普段はとても温厚で優しげで儚げなのだが、腹の底は海より深く暗いブラックホール。にっこり笑顔の裏で一体どんな恐ろしいことを考えているのやら。
そして刺激をするとそれが表に出てくるのだ。
その時の彼を言うなれば天使の微笑みをたたえた魔王様だ。
そんな真っ黒な彼に呼び出された。
放課後になった瞬間『ねぇ今日ヒマだよね?てかヒマでしょ。だからさ、ちょっとあそこ行って待っててくれない?俺もすぐ行くから』っていう流れで断る暇もなく…というか死にたくないからしっかりと言われた場所で待機。
幸村様の言う「あそこ」って言うのはね…あれッスわ。
校舎裏のね、俗に言う告白スポットってとこですかね。はい。
なんでここに呼び出されたんだ?
…まさか告白?いやあの人に告白されるだなんてそんな恐ろしいことは…
あっまさか自分が告白されてるとこを見せつけたいのか!?きっとそうだ絶対そうだ!!なんてヒデェ奴なんだ!!人の気も知らないで!!!
「…ん?」
人の気?…誰の気だ?
まあいっか。
「やあ待たせたね」
そして20分くらい待ってようやく魔王様が現れた。
む。ひとりか。どうやら告白されるのを見せつけるためじゃなさそうだな。
「当たり前じゃないか」
「ぎゃっ心読むなよバカ!」
「フフっ」
「…んでなに?」
「うん、落ち着いて聞いてね」
「?」
瞬間、ふわりと何かに包まれた。
それが彼だと理解するのに時間はかからなかった。理解した途端顔に熱が集まり心臓がバクバクとなり始める。
心臓の音を聞かれたくないからそこから抜け出そうとするが、彼はまるで逃げるのは許さないとでも言うかのように腕に力をいれさらに引き寄せた。おかげで隙間は1ミリもない。
なぜこんなことになっているのか。
沸騰しそうな頭で必死に思考を巡らせた。
しかしパニックを起こしている頭ではそれは無駄だった。
「名無し」
くいっと顎を持ち上げられ上を向けば彼の顔がすぐ近くにあり、その整った顔がだんだんと近づいて来る。
「っちょ、ま…ゆきむ」
顔を背けようとしても顎を掴まれているためそれはできない。そのままどんどんと接近し、柔らかいそれが触れた。
それは触れるだけですぐに軽く音を鳴らして離された。
その音がさらに羞恥心を煽る。
目の前にある彼の顔も心なしか赤い。
しかしなぜこんなことを。
「なっなっ…なっなんっ」
必死に言葉を紡ごうとするがうまく声にならない。
「名無し…俺は、」
すっと頬に彼の手が添えられた。
「ッッ!」
体が固まる。
一体何を言われるのか。
聞きたいような聞きたくないような変な感覚。
「俺は名無しが好き」
聞きたかったような、聞きたくなかったような。
「……………え、」
「だから」
「わぁああ!わかったわかった!何度も言うな!」
「むぐ」
再び言おうとした幸村の口を慌てて両手で塞いだ。
そのままの状態でじっと見つめてくる幸村を見つめ返す。
嘘はついていないように見える。
そっと手を離し、下をむく。
「なんで幸村があたしなんかを…」
「名無しだから」
「?」
ちらと上を見れば、きれいに笑う幸村。
「気づいてないみたいだけど俺にだけしか見せない顔とかあるんだよ。あと可愛いし、ちょっとバカだし」
「おいバカってなにさ」
「フフッ」
「誤魔化すな…!」
再びぎゅ、と抱きしめられ耳元で囁かれる。
「ねえ、付き合ってくれるよね」
「…………もっかい」
「ん?」
「もう一回、す、すす、好きって…その」
そう言ったら一瞬目を見開いて、幸せそうに笑った。
「好きだよ名無し」
とてもすごく不完全燃焼サーセン