ツンデレ1週間

□2日目
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06
まったく意識されないってのも複雑やな



♪〜♪〜♪〜

大音量で音楽が鳴った。
耳元で。

「ッッ!!!」
あまりの衝撃に飛び起きる。
そして急いで止める。


「し…心臓飛び出るかと思った…」

朝から嫌な汗をかいた。
今度からケータイを枕元に置かないようにしよう。うん、そうしよう。

座ったままぐっと背筋を伸ばしひと息ついてから立ち上がり布団をたたむ。
そりゃもう丁寧に。

なんせ自分のものではないのだから。
さらには自分の家でも部屋でもない。

部屋の主はまだ静かな寝息をたてている。
寝顔かわいいなちくしょ―
む。ピアス5個も開けとんのかこの人は。手入れめんどくさいだろうに。
それにしても美形だ。睫毛なっがいし髪さらっさらだし女子か!
しかし可愛い。起きればカッコイイ。…世の中には不思議が溢れている。

「……はっ」
気付けば財前の顔が目の前にあった。
食い入るように見すぎて近づいていたのに気づかなかった。


さっと離れて部屋を出る。
誰も見ていないのになぜか恥ずかしさが込み上げてきて顔が熱くなった。

顔を冷やすため洗面所で顔を洗った。
顔の赤みがひいた頃、台所から料理をしている音が聞こえた。

行ってみれば恭子がいた。

「おはよう名前ちゃん!」

「おはようございます。お手伝いしますよ」

「あらお―きに!じゃあお皿並べてくれへん?」

恭子に言われた通り、皿を並べていく。
その皿に料理を盛り付けながら恭子が口を開いた。


「よう眠れた?」

「はいもうぐっすりと」


それを聞いた恭子の目が驚愕に見開かれる。

「光の部屋で?ぐっすり?ホンマに?」

手を止めて詰め寄る。

「はい…って恭子さん恭子さん!顔が崩れてますよ!!」

若干引きながら返事をした途端、美人が台無しに。ヘタをしたら三日月形の口からよだれが垂れてしまいそうだ。


「え?そんなことあらへんよ?」
「ありますよ。現在進行形で」

そう言っても恭子はなおニヤニヤニヤニヤ。
なぜこんなににやついているのだろうか。

「あ、名前ちゃん」

時計を見た途端、恭子の顔がいつもの美人に戻った。…良かった。

「光起こしてきてや。今頃二度寝しとるとこやから」

「は、はあ…」




2階へ向かう名前を恭子は再びにやつきながら見送った。



「名前ちゃん、どうやって起こすんかな〜」





扉を開け、中にいる人物の様子を伺う。

名前が起きた時とは違う様子が見て取れた。布団は腰まで下がっていて。うつぶせで何かを掴んでいる体制。近づいてその何かを見れば、ケータイだった。
きっと起きてアラームを止めたは良いが眠くて寝てしまったのだろう。要は二度寝だ。すごいな恭子さん。

「財前さん、朝ですよ」

肩を掴みゆさゆさと揺する。
すると身じろぎをして目を開けた。

「……」
「朝ですよ」
「……」
「起きて下さい」
「……」
「お―い」
「……」

寝そべったまま名前をぼーっと見ているだけでまったく反応を示さない。
とりあえずベッドから引きずり出さそう。


「……財前さ―ん?」
「……」
なんとかベッドの端に座らせたが、立ち上がる気配がない。どうする?落とすか?……いや後が怖いから却下。しかしこの様子じゃ布団をたためない。

仕方ない。床に座ってもらおう。
向き合って脇に手をいれ、持ち上げようとしたが失敗。
今度は背中に腕をまわし、抱きつかれているような形で持ち上げる。
衝撃がないように一歩二歩とゆっくり足をひいてあと少し、という所で耐えきれなくなった名前は倒れてしまった。
その際財前をかばい、思いっきり頭を床にぶつけた。


「いだ――っ!!」


やはり成長期の男子を女子が持ち上げるのは難しい。

「うっさいわボケ…」

耳元で声が響いてようやく覚醒したらしい財前は、今の状況を把握しようと起き上がった。


「あたた―…」

下から声がする。

「…?」

「あ、やっと起きましたか」

目を向けてみれば名前がいた。
その顔の横には己の手。
名前の上に跨るように乗っている自分。



「……」

「低血圧ですね―…って財前さ―ん?」


なぜか固まってしまった財前を不思議そうに見ながらぐぐっと胸元を押す。


「起きたなら退いて下さいよ」

「……」


上から退くと、さも気にした風もなく起きあがると己のベッドメイキングを始めた。

…なんとも思ってないんかい。

複雑な顔で名前の後ろ姿を眺める財前であった。




―その後。


「起こして来ました」
「おーきに!…で、どうだった?」
「どうって…何がですか」
「何かあったやろ?絶対あったやろ?」
「何かって…何がです?」
「おかんの期待しとる事なんか(あったけど)ないで」
「………ああ、そう(沈)」




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