『TRUSTAR』
□序章編
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「失礼しまーす」
声を張り上げて元気よく言ったのは他でもない、晴希だ。そして、榴咲と書かれた表札の家の玄関を開けると待ってましたと言わんばかりに、ある女性がいた。
「もしかして…ずっと待ってました?」
どうやら彼らにもそれなりの礼儀があるようだ。敬語を使うということは少なくとも2人よりは目上の人物なのだろう。
「え?いや…そんなことないと思うわ」
2人を気遣ってか弁解しようとしているが、目が泳いでいるせいかあまり説得力がない。それでもさらに2人はその女性を気遣って「そうですか」と短く答えた。
「でも…2人がいつか私の家に来ることはわかっていたわ」
そう言って優しく微笑む姿は、まるで太陽のように明るく、でもどこか悲しげな表情だった。
「…それで…やっぱり用件は…」
「はい、槐飛のことです。小哲…やなかった、哲矢から聞いた情報やと妹さんがいるらしい言うて…妹さんまで巻き込みたくはないんですが…」
下手に、なまりのある話し方で敬語を使うとぎこちなくなるのか何とも聞きづらい話し方で、隣で聞いてる潤斗は妙に苛々していた。
「いいのよ…本当は身内が片付けなきゃいけないのに2人まで巻き込んでしまって…緋愛奈には悪いけど、あの子をお願いするわ」
「緋愛奈…それが妹さんの名前なんですね?」
「ほんま今日の潤斗はいつもとやる気が違うな」
半分呆れた視線を潤斗に送ると、潤斗は晴希に偉そうな視線を腕組みして返した。
「2人になら任せられるわ。正直言うとね、槐飛よりも信用してるのよ。…だから、裏切らないでね」
「そんなん当たり前です!」
「だな。」
「…ありがとう。緋愛奈は、この家から西にだいたい200m行ったくらいにある鬼乃通(きのつ)高校に通っているわ」
そう言うと、部屋から紙とペンを取ってきて簡単に地図を書き始めた。
「緋愛奈ちゃんかぁ…どんな子やろ」
「可愛いに違いないだろ。お母さんがこんなに綺麗なんだからさ」
「あら、照れるじゃない」
そんな2人のやり取りを見て晴希は呆れるしかなかった。