まるマ

□村田健の事情
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なあ。

「村田って彼女とかいないの?」

なんて突拍子も無いことを渋谷が言うから、僕は面白がって即答してやった。

「いるよ」
「マジで!?」

馬鹿正直に渋谷が驚く。僕は堪えきれずに笑ってしまった。

「なにが可笑しいんだよ村田……あ、からかったな!?」
「あはは、ごめんごめん」

笑いを堪えつつ渋谷をなだめて、僕はまた口を開いた。

でも。

「でも、好きな人ならいないでもないよ」
「マジ? 誰?」
「当てたら教えてあげるよ」
「え、おれも知ってる人?」
「当てたら、ね」
「ほんとだな? よーしヒント!どんな子?」
「どんな子、うーん……」

言葉にするには難しい。僕は必死に、渋谷に説明する為の言葉を探す。

「優しくて、まっすぐで……」

渋谷は腕組をして、本格的に考え出した。真剣なその様子が可笑しくて、僕は内心で小さく笑った。実際に笑うと、渋谷は怒るから。

僕は、安っぽい言葉しか浮かばない自分に歯がゆさを覚えながら、言葉を続けた。

「正義感が強くて、いつも一人で突っ走ってて、見てると危なっかしくて」

これはさすがに勘付くだろうと思ったのに、渋谷は一向に閃く様子を見せない。

その内渋谷と目が合って、僕は呆れて、そのまま目を逸らさずに言ってやった。

「鈍感で」

渋谷はまた、うーんと考え出してしまった。


「……なぁ村田、それはおれにとって分かり易いヒントかな?」
「……」













僕の想い人、それは…君だ。

(いつか気づいてくれたら……なんて)



fin.

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