まるマ
□君の傍にいたい
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なあヴォルフ、
「クリスマスって知ってる?」
「何だそれは。男か」
そう言うと思った。
君の傍にいたい
ヴォルフラムは最近忙しい。ビーレフェルト領の次期領主だから、多分その準備で、血盟城に何日も帰らなかったりする。帰って来ても、すぐにビーレフェルトに行ってしまう。
今日だって、5日振りに帰って来た翌日だというのに、また旅立とうとしている。普段ならそれくらい我慢するけれど、何せ今日は特別な日だ。
「もう少しくらい居れないのか? せめて今日1日」
「……すまない」
本当にすまなそうにそう言う彼を引き留めるのは心苦しい。
心苦しいのだが、
「なあヴォルフ、クリスマスって知ってる?」
「何だそれは。男か」
「違うから。何て言うかなー、地球のイベント?」
「それがどうした」
「まあ聞けよ。クリスマスっていうのはキリストの誕生日で……」
いや、これは要らない説明だ。
「ユーリ、悪いが僕はもう……」
「あ、待って……!」
ヴォルフラムが行ってしまう。
「だから……クリスマスっていうのは恋人同士が一緒に過ごす日なんだっ」
扉に手を掛けるヴォルフに、おれは慌ててまくし立てた。彼は驚いたようにおれを振り返る。
だから、
「だから……今日はおれの傍にいて欲しい」
その後ヴォルフラムは、急いでビーレフェルトに白鳩便を飛ばした。
(叔父上へ。暫く帰りません。甥より)
fin.