まるマ
□雨音
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ふと目を覚ました時、外では雨が降っていた。雨に打たれて窓が鳴る。不規則なその音は、どこか心地良かった。
時計を見ると、午前2時過ぎ。
(変な時間に起きちゃったな)
中途半端に目が冴えて、しばらくは眠れそうにない。……困った。
夜更かしは苦手だ。夜の闇に惑わされて、物思いにふけるから。暗い部屋でじっとしていると、ずっと昔からの記憶に呑まれそうになる。僕はその度にぐっと自分を保つ。まるで精神統一の修行みたい。
雨足が強まって、窓が一層強く鳴る。
身を焼く炎の、地獄のような熱さを覚えている。
嫌だ。
こちらをおぞましそうに見ながら、武器を手に襲い掛かって来る人々の目を覚えている。
違う、僕じゃない。
気味が悪いと言われたこと、人ではないと、悪魔と罵られたこと。
違う!
瞬間、僕のケータイが鳴った。メールではなく、電話だった。……こんな時間に?
だけど、電話の相手はすぐに分かった。ほとんど反射的に通話ボタンを押す。
「……渋谷」
『村田、起きてた?』
「うん」
君は笑って、いやーなんか眠れなくてさーなんて話し掛けて来る。
同じ理由なんて。
僕は無性に安心して、嬉しくて仕方が無かった。
雨音
いつの間にか雨は止んでいて、僕は知らずに眠ってしまった。
(村田ー)(むーらーたー、寝た?)(健んくーん)(………好きー)
fin.