まるマ

□under the sea
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その瞬間、僕は痛みも恐怖も感じなかった。明るい水の中を海底へと沈んで行く感覚は、むしろ心地良かったし、水越しに見える空は、とても美しかった。

そして僕は見たんだ。

とても懐かしい、金と赤の――




 under the sea




何も信じられなかった。とても重大な秘密を、多くの記憶を抱えて、僕は孤独だった。

そんな馬鹿げた話を、誰も理解してくれるとは思えなかったし、自分だって、全てを受け入れたわけじゃない。そんな恐ろしい箱が、この世に存在するものか。遠い前世の記憶など、ある筈がない。

だが箱は実在した。信頼出来る仲間とも巡り合えたが、やはり秘密を打ち明けることは出来なかった。僕は孤独だった。

そして僕はここで死ぬのだ。太平洋の海に投げ出され、明るい海の底に沈み、直にその瞬間を迎える。


この記憶は本物だろうか。本当に、僕は箱を護らなければならなかったのか。だとしたら、何故、僕だった?何の為?

誰の為?


頭の奥がちりちりと痛んだ。遠い記憶が甦って来る。

何百という人間の、生きた証。禁忌の箱。死の瞬間。大賢者。金と赤の………


ああ、そうだ。


もしかしたら、もう“アンリ・レジャン”としての意識は途絶えていたのかも知れない。その頃になって、僕はようやく全てを受け入れた。そうだ、全て……


全ては君の為に。


そして僕は見たんだ。とても懐かしい、金と赤を身に纏う「彼」を。



「眞王、」






君に逢えて良かった。



fin.

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