まるマ

□君の隣
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僕は別に、人付き合いが苦手なつもりは無い。むしろ上手い方だ。「村田健」は。

記憶に呑まれる事もなく、この秘密を飼い慣らし、周りに上手く溶け込んでいる。いや、溶け込んでいるというのは嘘か。

人付き合いが苦手な訳ではない。ただ、多少の壁があるだけだ。自分は他人とは違うのだという思いが、心の中に常にある。そう言い聞かせなければ――うっかり心を許して秘密を明かしてしまったら……その先を考えると、未だに怖い。

避けるでもなく、ただし完全には心を開かない。村田健は今までで一番、人との付き合い方を心得ている。

そういう生き方が辛いと思うようになったのは――彼と親しくなってからだった。


「どうかしたか?」
「え?」

いつの間にか、渋谷がトイレから戻って来ていた。手にはホットココアが2本。わざわざ公園の外まで買いに行ってくれたらしい。

結構な時間、僕はボーっとしていたようだ。

「別に…」

言いかけて、僕は「いや」と首を振った。差し出されたココアを受け取る。彼に壁を作る必要は無い。

「渋谷と出逢えて良かったなーって」
「何だそりゃ」

冗談ではないけれど、冗談めかして言ったのは、ただ単に照れくさかったからだ。

「記憶の話か?」
「…うん」

渋谷が、世間話でも聞くような顔で、僕の隣に座った。ちっとも深刻じゃないみたいに。――本当はさして深刻な事ではないのかもしれない。

「だって、ずっと誰も信じられなかったから。前の人生でも、その前も、その前人生だって、結局……」

突然、ぎゅっと手を握られた。何かと思って横を見ると、彼はニカっと笑ってこう言った。

「村田は村田。何も気負わなくて良い。いざとなったらおれがいる」
「何それ、プロポーズ?」
「止めてくれ、そんなヴォルフみたいな台詞」

僕は笑った。





君の隣は心地良い。

何も知らない友達のように接してくれるのに、僕は君に何の隠し事もしなくて良いから。



fin.












友達か恋人かと訊かれたら、かなり際どいと答えます^p^
二人はどっちでも良いんです^p^

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