まるマ
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想いを口にしたことは無かった。
勘づかれるような行動を取った覚えも無いし、今まで奴とそんな話をしたことも無い。つまり、奴がこの気持ちを知っていることは有り得ない。
何より俺は、ただ、猊下とお話ししていただけだ。楽しく。和やかに。
――巫女さん方は、俺を筋肉の塊としか見てないんすよ。あんな可愛い顔して、訓練より過酷な労働を強要して来ますからね。
――筋肉の塊じゃないのに働かされてる僕の方が辛いよ。まったく、この国の女性たちは人使いが荒すぎる。
――やーん、俺たち何だか気が合いますねっ。付き合っちゃいます?
猊下は呆れていたし、俺だって、ただの軽口のつもりだった。
そこにあの男が――ウェラー卿が、何故か突然割り込んで来たのだ。唐突に、何馬鹿なことを言っているんだ、とでも言うように。いや、実際そう言われた。
何を言っているんだ、
猊下も俺も、驚いて顔を上げる。
「お前が好きなのは俺だろう」
俺は頭の中が真っ白になった。
10.06.18
「アカシア」は花の名前です。
花言葉は【忍ぶ恋】。
ちょっと続きます。→2