まるマ
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「…俺は、言わないからな」
顔を離して、俯いたまま、奴はそう呟いた。
何を、と回らない頭で思う。
「俺は、酷い男だ。こんなことをしておいて、今だって、拒絶されることを恐れてる。お前の傍にいられなくなる位なら、いつまでも親友のままでいたいなんてことを思ってる」
だから。
「だから、俺は…言わない」
「コン、ラッ…げほっ」
声が掠れた。緊張と、上手く頭が回らないせいだ。
でも、今自分が言うべきこと、言わなくてはならないことは分かった。今言わなければ、一生言えなくなる言葉。俺は直感的にそう思った。
「コンラッド」
名前を呼ぶと、奴がまた顔を上げた。
何て情けない面してるんだよ、お前。
「好きだ…」
言葉と同時に、涙が伝った。想いと一緒に溢れ出たのかもしれない。それを、奴の舌が舐め取った。それから、瞼にキスを落とされる。
目が合って、再び唇を重ね合った。
「酷く、遠回りをした気がする」
俺の肩に額を預けながら、奴が言った。
そうかもしれない。
こうなってからやっと気付く。俺たちはとっくに通じ合ってたんだ。それなのに、二人して臆病で、想いを隠すことに必死で、あと一歩が踏み出せずにいた。たった一言が言えないまま、一体どれだけの時間を無駄にして来たのか…。
ま、どうでも良いかそんなこと。
「隊長は言ってくれないんですか?」
わざとらしく軽い声を出す。
「言って欲しいか?」
「べつに〜?」
嘘じゃなかった。もう十分だった。言葉なんか要らない。本気でそう思った。
そろそろ戻ろうぜ、と言おうとしたら、奴は突然、耳に顔を近づけて来た。そこで愛の言葉を囁かれる。
思わず爆笑したら、思いっきり蹴られた。
(痛ってぇ、何しやがる)
(うるさい、しねっ)
(あーん、隊長のいじわるーう)
-おわり-
10.7.4