まるマ

□ご先祖様と少年の会話
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ああ、イライラする。

――貴方は少し、あの方に対して冷たすぎるのではないですか? もう少し優しい物言いが出来ないものでしょうか。確かに勝手極まりない傍若無人な性格ではありますが、それでも尊敬に値する人物である筈です。貴方だって、そういう気持ちを抱いているのでしょう?

(ああ本当にうるさい。僕が彼に何を言おうと、僕の勝手だ。彼が自分勝手に遊び回るんだから、僕にもそれ位許される筈だ)

――しかし、あれでは流石に可哀想です。

(四千年以上前に生まれた男を捕まえて、可哀想? は、貴方は実際に彼の相手をしなくて済むようになったから、他人事だと思ってそんなことが言えるんだ。僕にだって、我慢の限界ってものがある。これでもよく、堪えた方だ)

――彼だって堪えて来ました。貴方と同じように、四千年間……

(そういうことを言ってるんじゃなくてね、まったく、これじゃあ埒があかない。貴方も大概、石頭だな)

――貴方もなかなか頑固者ですよ。

ふふ、と笑う声がした。彼のこういうところが気に食わない。こうやって、何事にも穏やかに構えるところ。こっちは至って喧嘩腰だというのに。

(僕は、貴方が嫌いだ。勿論、僕に厄介な呪いをかけた彼のことも。貴方は彼を好きなのかもしれないが、それは僕には関係ない。2人仲良く、静かにしていてくれる?)

―彼は貴方が好きなんですよ。

「黙ってよ!」

みんなが一斉に僕を見た。

渋谷も、ウェラー卿も、フォンクライスト卿も、フォンビーレフェルト卿も、驚いて固まってしまっていた。――フォンヴォルテール卿の驚愕の表情はちょっとレアだな、となんだか得した気分になる。

(……本当に、恨むよ)

御隠居にしては態度のデカすぎる男に、小言ばかり煩い男。ああ、イライラする。何で僕ばっかり。煩わしいったらない。

――ふふ、実は楽しそうですよね、貴方。




黙ってよ。

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