その他

□顛末
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会社の受付嬢に話し掛けただけで浮気だし、お茶汲みの可愛い娘とデートしても浮気。同僚と電話をしてても、浮気って言われて物を投げられる。でもさそれって、凄く幸せなことなんじゃないのか。

だってそれだけ愛されてるってことだろう?

時計がカチッと鳴る。クラウドが出て行ってから、一時間半。外は取り分け寒い訳じゃないけれど、彼は取るものも取り敢えず、上着も羽織らずに飛び出した。夜だし、風も吹いているし、それなりに冷える筈だ。一人で泣きながら震えているかもしれない。

どこぞの勘違いオヤジに声を掛けられていないとも限らない。

「くそっ…!」

一時間半、見詰め続けていた携帯を鷲掴みにし、ドタドタと玄関に向かいながら発信履歴の一番上に電話する。取るものも取り敢えず、上着すら持たずに飛び出した彼が携帯を持っていない可能性なんて、露も考えなかった。

しかし彼は、俺がガチャッとドアを開けると同時に、電話に出た。

「クラウド……」
「…」

俺はドアのすぐ横で俯いている電話の相手に向かって話し掛けた。心なしか震えている。寒いのか。はたまた泣いているのかもしれない。小さな声で「ザックス」と名前を呼ばれた気がして、電話なんて手放して強く強く彼を抱き締めた。

どれくらいの時間、クラウドがここに立っていたかは分からない。けれど、彼の肩も頬も、すっかり冷えてしまっていた。ずっとここにいたのかもしれない。

「ザックス、俺…謝り…たくて…」
「うん、うん、何?」

髪に、首に、肩に、耳に、キスの雨を降らせながら、ぽろぽろ溢れてくる涙を擦り付けながら、クラウドの言葉を聞く。

「ザックス…」

小さい声。恥ずかしがる時はいつもそう。

「ごめん…」
「いいよ。俺もごめんね」
「俺のことを嫌いになった?」
「ならないよ」
「嘘だ」
「ほんとさ」
「じゃあ好きって言って」
「好きだよ、クラウド。好きだ」

彼の涙を拭ってやる。二人でじっと見詰め合う。

「好きだ」

熱く熱く口付けて、そのまま二人で家に入ってバタンと扉を閉めた。二人にしては長い喧嘩の収束だった。









拗ねてごねるクラウド萌えます
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