あいのうた
□帰還
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突然のスタツアにももう驚かない。毎度の事で慣れてしまったから。着地場所が泥の混じった水溜まりだろうと、文句は言うまい。多分改善されないから。
その日、おれは眞魔国に来ていた。しばらく呼ばれていなかったし、そろそろみんなの事が恋しくなってきていたおれは、実は密かに喜んでいたりした。
とにかく気分は良好だった。しかし、そんなおれを待ち受けていたのは、それをくつがえす程の、衝撃的なニュースだった。
辺りを見渡してみると、ここは緑が眩しい丘の上だった。最近雨が降ったのか、小さな水溜まりが点々としている。血盟城も見えるので、どうやら今回は近場らしい。
ふと背後に視線を感じた。痛い程見詰められている気がする。「見詰める」というより、睨まれているような……。
おれは、水溜まりに座り込んだまま、そろそろと後ろを振り返り、顔を上げた。そこには、天使のごとくわがまま美少年が、思いっきり眉間にしわを寄せながら立っていた。鬼のような形相で、おれを見下ろしている。
「そんなおっかない顔するなよヴォルフラムー」
グウェンみたいでビビるだろ?
おれはひとまず立ち上がろうと腰を浮かせた。そんなおれを手伝う事もせず、ヴォルフラムは「へなちょこ」でも「尻軽」でもなくたった一言こう言った。
「グレタの様子がおかしい」
おれはバランスを崩して、再び水溜まりに尻餅をついた。バシャリと泥水が跳ねる。一瞬、思考回路が停止する。
遠くに二つの影が見えた。コンラッドとギュンターだ。どうやら彼らもおれの出迎えに来てくれたらしい。
……ヴォルフラムは今、何て言ったんだろう。
グレタノヨウスガオカシイ。
ぐれたのようすがおかしい。
グレタの様子が…
「様子がおかしいって……」
なに!?
と尋ねようとしたおれの言葉は、ヴォルフラムに遮られてしまった。
「いいからさっさと城に来い!このへなちょこ!」
あ、それは言うのかよ。