あいのうた

□帰還
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* * * *




城に戻ったおれを出迎えてくれたのは、愛しの娘グレタだった。グレタは、目映いばかりの笑顔でおれに抱きつき、さらに押し付けた頭をぐりぐりしてきた。

「お帰りなさいユーリ!」
「ただいま、グレタ。良い子にしてたか?」
「うん!あのねー、グレタね、毎日アニシナに勉強教わってるのー」

これは止めた方が良いのだろうか。

いや、それより…

「様子がおかしいって?」

おれは隣にいるコンラッドに耳打った。

グレタの様子がおかしいというのは、どうやら確かな情報らしい。あの後、放心のおれを何とか立ち直らせてくれたコンラッドとギュンターに確認した。

「いえ、今は大丈夫みたいですね。詳しい事は……明日お話しします」

後は若い二人同士で、と爽やかに言って、コンラッドはヴォルフとギュンターを引き連れて(というか引きずって)何処かへ行ってしまった。いや、コンラッド、それ見合いだから。それを言うなら「親子水入らずで」だから。


何はともあれ、おれはその後の時間をずっとグレタと過ごした。元々傾きかけていた陽が完全に沈んでしまうまでの短い時間だった。その短い時間を、おれとグレタは何でもない会話を交わしながら、ただ城の周りを歩いて過ごした。

グレタはずっと笑っていた。その笑顔の中に、みんなが言う異変なんておれには微塵も感じられなかった。



-つづく-
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