あいのうた

□異変
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そもそもここは王様専用の部屋なので、普段から広いことは広いのだが、今夜はいつになく広い。それだけじゃない。静かだった。水を打ったようにとまではいかないが、いつもの騒がしさに比べたら、静かだ。

理由は簡単、ヴォルフラムがいないから。

いつものようにおれのベッドに潜り込んでは来たものの、突然現れたコンラッドにまたもや連れて行かれてしまったのだ。

「今日は陛下も、帰還されたばかりでお疲れだと思うので」
「ちょっと待て。その心遣いをどうして今までしてくれなかったわけ!?」
「忘れてました」
「わす……」

そう笑顔でキッパリ言われてしまい、おれは言い返す気力を無くしてしまった。

何にせよ、一人部屋を確保出来るのならそれに越した事はない。元々ここはおれ専用の部屋の筈だ。あの変ないびきも聞かずに済む。

しかし、安眠出来る筈の一人部屋で、おれはいつまでも眠れずにいた。静かである事が災いして、昼間の事を思い出してしまったからだ。


久し振りに眞魔国に来たおれに、ヴォルフラムはグウェンダル張りのおっかない顔でこう言った。

「グレタの様子がおかしい」

ヴォルフだけじゃない。ギュンターもコンラッドもそう言った。皆が口を揃えて「グレタの様子がおかしい」と言う。

だけど実際に会って抱き締めても、笑って楽しそうに話をする姿にも、どこにも異変なんて見付からない。グレタは、いつもの可愛いグレタだった。なら、皆が言うグレタの異変って何だろう。


可愛らしさが増した事かな? なんて事を(半ば真剣に)考えていたら、程良い眠気に苛まれたので目を閉じた。

扉が鳴ったのは、まさにその時だった。


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