あいのうた
□原因
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「あれ、ユーリ。今日はまた随分と早いですね」
「うん、まあね。なぁコンラッド、最近ツェリ様に出産のご予定とか、あったりしない?」
今のところ、グレタに妹・弟分ができたという話は聞いていない。となれば、一番あり得るのは誰かの妊娠話だろう。その可能性が取り分け高いのが、フェロモンクイーン・ツェリ様。
まぁ、いくら自由恋愛旅行中とはいえ、あり得ない話だとは思ったが――
「え? いえ…無いと思いますよ。多分、ええ……」
何でちょっと自信無さげなんだよコンラッド。
「そっかぁー、じゃあ他の人かな。ニコラ? ギーゼラさん? え、もしかしてアニシナさん!?」
「違うよ渋谷。君ってほんと単細胞っていうか、見当違いっていうか……馬鹿? グレタ姫が悩んでるのはそんなんじゃないって」
「あ、村田!お前、いつの間に!? そうやって突然現れて、やんわりとおれの心を傷つけないでくれ――って、今何て言った?」
「…馬鹿?」
「そこじゃねぇよ!その後、グレタが…なんだって? グレタが赤ちゃん戻りしちゃったのって、下に妹か弟が出来たからじゃないの?」
おれの空回りな質問に答えてくれたのは、村田ではなくコンラッドだった。
「グレタは、陛下がいなくて寂しかったんですよ」
「え!」
余りの衝撃に息が詰まった。驚き過ぎて、決まり文句の「陛下って呼ぶな」を忘れてしまった。
「グレタがあまりにもユーリユーリと言うものだから、ヴォルフラムが拗ねています」
「あー、それでアイツ機嫌悪かったのな」
それなら鬼の形相も頷ける。
「いつの間にあんなにグウェンに似ちゃったのかと思ったよ」
「グウェンダルも拗ねてますよ」
「マジで!?」
昨日に引き続き二度目の衝撃だ。あの強面が拗ねている所なんて、ちょっと想像出来ない。いや、したくない。やっぱり体育座りとかしちゃってるんだろうか。地面をぐりぐりなんてしてるんだろうか。
うっかり想像したら、嫌な気分になってしまった。それが顔にも出てしまったのか、コンラッドがやんわりと補足する。
「眉間のしわが2本程増えただけだけど」
ですよねー。