今日から君と

□現状
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ヴォルフラムが倒れてから、数日。翌日に雨が上がって以来、気持ちの良い晴天が続いていた。

あれから毎日、ユーリはヴォルフラムの所に通っている。ヴォルフラムは思いきり迷惑そうにしているが、それでもくじけず、何度も話しかけては接点を持とうとした。

最悪――1からまた新たに関係を築こうというのだろう。そう、彼は諦めないと誓ったのだ。落ち込んでいる暇はない。彼との関係を変えると決めた、彼には。

ヴォルフラムが忘れているのは、どうやらユーリのことだけのようだった。グレタには普段通り、愛着を持って接していたし、“ユーリと出会う前に戻った”という訳でもないらしい。

「他に変わったことと言えば――俺への接し方ですかね」

そう言うと、長兄はいくらか興味を持ってくれたらしく(眉が少しばかり動いた)、長いこと動き続けていた筆をやっと止めてくれた。

「と、言うと?」
「心を許してくれてるような、そんな感じだよ。最近はすっかり打ち解けた気になっていたけどね。それ以上だ。まるで――俺が混血だと知る前の、あの感じ……」

そこで、一つ思い出し笑いをしたら長兄に睨まれてしまった。肩をすくめて、素早く種明かしをする。

「久し振りに、“小っちゃい兄上”と呼ばれてしまった」

瞬間、兄の眉間にしわが寄った。笑いを堪えているのだ。

「慌てて言い直したと思ったら、今度は“コンラート兄上”だと。笑ってしまったよ」
「なるほど、昔のアレだな」
「羨ましい?」

そう茶化したら、筆を折らんばかりの勢いで凄まれてしまったので、瞬時に「冗談だよ」と目を逸らし、本題に戻る。

「ギュンターにも白鳩を飛ばしてみるよ」
「そうしてくれ」
「しばらくは安静にしているようにと言われている。心配は要らないから、一度会いに行ってやっては?」

グウェンダルは長い沈黙の後、

「……考えてみよう」

そう、絞り出すように言ったのだった。






* * * * *






グウェンへの報告を終えて、部屋を出る。

一つ、報告していないことがあった。

あの日――ヴォルフラムが倒れた日、自室に戻るところをギーゼラに呼び止められた。

「コンラート閣下」
「ギーゼラ、どうした?」
「あの…ヴォルフラム閣下のことで、お話が……」

重々しく口にされた弟の名前に、反射的に眉を潜める。

「やっぱり何か問題が?」
「あ、いえ。命に別状が無いのは、先程お伝えした通りです」ギーゼラが慌てて言う。「今お話ししたいのは――記憶を無くされていることについてです」

その言葉に、俺はほっと胸を撫で下ろした。撫で下ろしたところで、いや記憶喪失だって心配だと我に帰る。


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