*BL Original novel・1*
□優しい傷@
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「誰が?いつ何を……」
体を起こされたが、足はもつれ、木に肩がぶつかった。
「木村という人を知っていますか?」
知ってるも何も、さっきまで一緒にここにいた人の名前だ!
「大学の……先輩の木村さんなら」
「……その人から訴えがありまして。誰かに怪我を負わされたということなんですが。身に覚えはありますか?」
は、はあ?
「待って!僕が加害者なんですか?」
逆だろう!
警官は、僕の格好を観察するように一歩離れて見ている。
その目が一瞬鋭さを増した。
この姿見れば、わかるだろう!
でも、何があったかなんて、警察で詳しく話さなければならないのだろうか?
いやだ!
とっさに逃げ出そうと動く体。
向きを変えるまでもなく、すぐに肩を押さえられた。
ふうっ、と吐いた息は、その警官のものだ。
「逃げなくていいよ。とりあえず、一緒に行こう」
振り返り、見上げると、警官と視線が合った。
ふっと、その目が細められて、優しい表情になった。頭の上に乗せられた大きな手。
「大丈夫だよ。怖くない」
迷子を保護したお巡りさんみたいだなって、思った。
ただ僕は、もう、逃げ出す元気もないだけで……。